ドイツで注目度上昇 ビーレフェルト奥川の2戦連続ゴールに見た“攻撃の切り札”としての光

ライプツィヒ戦では数的劣勢となったなかで貴重な追加点を奪取

 15節終了時でビーレフェルトのチーム総得点はリーグ最少となる「10」。得点力に極めて大きな問題を抱えていたチームなわけだが、だからといってゴールチャンスがまったくなかったかというと、そういうわけではない。どの試合でもそれなりに、狙い通りの形からあと一歩でゴールというところまでは持ち込めていた。奥川もうなずく。

「そうですね、練習から相手に合わせた戦術に取り組んで、それがハマってきている。前半途中でフォーメーションを変えたり、というのができているのが大きいと思います。勝つためには得点が少ないというのが課題ですけど、戦うところはどこのチームにも劣ってないなと思います」

 この日のパフォーマンスは偶然ではなかった。続く17節RBライプツィヒ戦も2-0で見事な勝利。しかも、後半25分にキャプテンのFWファビアン・クロスが一発レッドで退場処分を受けるというショックを乗り越えての勝ち星だ。そしてチームを救ったのはまたしても奥川だった。

 後半30分、相手陣内コーナーフラッグ付近で一度はボールを奪われた奥川だが、すぐにライプツィヒMFアマドゥ・ハイダラへプレッシャーをかけると、これがミスを誘う。ペナルティエリア付近でパスをカットしたフロリアン・クリューガーからタイミングよくスペースに入り込んでスルーパスを受けた奥川は、ワントラップでボールを丁寧にコントロールし、素早い2タッチ目で左足シュート。名手ペーター・グラシュの牙城を崩した。

「ライプツィヒは強いですけど、正直僕の中でザルツブルクでの関わりもあるので。知ってる選手も多いです。そういう意味で、僕のゴールで勝ちたいというのはある。オフに向けてみんなで最後力振り絞ってサポーターに勝利を届けられたらいいなと思います」

 ボーフム戦後の最後にこの試合に向けての意気込みを語っていたが、まさに有言実行。それも数的不利になって、相手の圧力が高まって、じわりじわりとストレスがのしかかってきていた時間帯に生まれた貴重な追加点だ。

 この日の勝利でビーレフェルトは他チームとの勝ち点差を一気に詰めることに成功した。順位はまだ17位だが、14位ボルシアMGまでの勝ち点差はわずかに「3」。現実的に十分逆転可能な数字になってきた。これで冬休みに入るのがもったいないくらいの状態だが、今は一度ゆっくりと身も心も休ませて、後半さらに躍動した姿を見せてほしい。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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