「イエローカードは覚悟」 浦和・槙野智章、背番号「5」ユニを掲げた惜別の思い

今季で浦和を退団するDF槙野【写真:高橋 学】
今季で浦和を退団するDF槙野【写真:高橋 学】

途中出場後、試合終了間際に劇的な決勝ゴール 愛するレッズを天皇杯制覇へ導く

 浦和レッズの元日本代表DF槙野智章は、自身にとって浦和でラストゲームとなった12月19日の天皇杯決勝、大分トリニータ戦の試合終了間際に劇的な決勝ゴールを決めて2-1の勝利と優勝に導いた。10シーズンの在籍の最後になった一撃に「浦和レッズの5番、槙野というのを忘れてほしくない一心だった」と振り返った。

 浦和は1-0でリードしていた後半45分に、大分のMFペレイラの同点弾を許した。しかし同アディショナルタイム、逃げ切りのために投入されていた槙野が一転して浦和の最終兵器になった。コーナーキックのこぼれ球をMF柴戸海が左足ボレーで狙うと、ポジションを取り直していた槙野はヘディングでコースを変え、難しいボールを枠内に。これが、浦和に3大会ぶりの天皇杯優勝と来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権をもたらした。

 槙野はそのまま浦和サポーターの集うゴール裏に向けてダッシュ。そして、「良くないことではあるけど、イエローカードは覚悟して」ユニフォームを脱ぐと、背番号「5」をサポーター側に掲げるように手に持った。それは、「浦和レッズの5番、槙野というのを忘れてほしくない一心だった」という惜別の思いだった。

 サンフレッチェ広島のユースからトップ昇格した槙野は、ドイツ移籍を経て2012年に期限付き移籍で加入。翌年には完全移籍となって浦和の一員として戦ってきた。その間には2017年にACL優勝を果たし、翌年にはロシア・ワールドカップにも出場した。しかし、今季限りでの契約満了が11月にクラブから通達されていた。それ以来「3週間くらい、本当に整理がつかず、ほぼ毎日泣いていた」というところから、自身の役割を再び考え直したという。

「最後にやらなければいけないことを整理して日々のトレーニングをしてきた。チームの雰囲気を作ること、終盤の守備固め、中には点を取りにいくようなこともやった。毎日の練習を100%やること、雰囲気を作ること、誰よりもシュート練習して、子供の頃からのゴールを取りたいというのを思い続けることをやってきた成果だと思う。僕がふさぎ込んだらチームに悪い空気が流れてしまう。練習場に来てやったのは、10年間変わらずに最後までボールを蹴っている姿をチームメイトに見せることは心掛けた」

 思えば浦和に加入した最初のシーズン、槙野はリーグ最終節の名古屋グランパス戦で強烈な弾丸ミドルをフリーキックで決めて勝利に導き、チームの3位と翌シーズンのACL出場権を勝ち取った。そして浦和でのラストゲームもまた、自身のゴールと勝利で翌シーズンのACL出場権を置き土産にしていった。

「このチームに残さなければいけない最後の宿題を達成できたと思う。残さなければいけないものは、タイトルを含めてアジアへの切符だった。最後のゴールは、僕にとってのご褒美が待っていてくれたのかな」

 来季も現役を続行することを宣言しているだけに、浦和とは対戦チームとして再開する可能性もある。それでも、浦和にタイトルとアジアへの道のりを残し、槙野は「5番」のユニフォームでの10年間に終止符を打った。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)


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