シュツットガルトの心臓・遠藤航、「悪くはない」では済まされない“キャプテン”の使命

遠藤は「100%の力を発揮できなくても、ブンデス平均より上のレベル」

 シュツットガルトにおいて遠藤は誰よりも信頼されている。同時に誰よりも高いレベルでのプレーを要求されてもいる。例えば2-2で引き分けた14節ヘルタ・ベルリン戦後、監督記者会見でシュツットガルトのぺジェグリーニ・マテラッツォ監督に遠藤のパフォーマンスについて聞いてみたら、次のように答えてくれた。

「ワタル……、オッケーだ。アンカーの位置で常にボールを受けられる位置に動いていた。ただ前半、(チームを)穴から引き上げることができなかった。プレスの状況でアクティブに関われたかというと、我々が望んでいたようにはいかなかったのも確かだ。“オルデントリッヒ”な内容だった。1対1の競り合いも多かった」

 オルデントリッヒとは、直訳すると「悪くはない」「秩序ある」「堅実な」という意味になる。確かな評価として捉えられるが、遠藤が要求されているのはそこではない。自分のプレーを無難に披露して、それで問題なしというわけにはいかないのだ。キャプテンとして、苦しい時、チームに刺激を与えなければならない存在なのだから。ボールを落ち着かせ、ゲームをコントロールし、確かなバランスを見出し、試合の流れを手繰り寄せる。だからマテラッツォ監督は一言添えたのだろう。

 ヘルタ戦では印象的なシーンもあった。中盤でボールを持った遠藤に対して、相手選手が削り取らんばかりのハードチャージでアタック。遠目で見ていても相当に激しい当たりだったし、審判もすぐに笛を吹きシュツットガルトボールのファウルとなった。

 大丈夫か? 周囲が少しざわつく。だが遠藤は微動だにせず、足をトントンとした後、また何事もなかったかのように普通に走り出していた。相手選手は何なんだという驚きのジェスチャー。そしてそんな戦う姿に味方はほっと胸をなでおろし、新しいエネルギーをもらい、キャプテンの頼もしさが自信となって伝搬していく。

「疲れていたとしても、いつでもプレーする意欲を持っている。そして例え彼が100%の力を発揮できない試合があったとしても、ブンデスリーガの平均よりもずっと上のレベルなのだ」

 ミスリンタートSDはそう語っていた。

 第16節では王者バイエルン・ミュンヘンに0-5で完敗。グラウンドコンディションも悪く、味方が次々とミスをしていくなか、遠藤は懸命にボールを収め、落ち着かせ、ゲームの流れを作り出そうと走り続けていた。順位的には残留争いの真っただ中。でも苦難な時こそ真価は試される。

 チームのポテンシャルは高い。遠藤を中心に悪い流れを食い止め、跳ね返し、また昨シーズンのような躍動感あるサッカーを取り戻してほしい。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。

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