ブッフバルトも認める22歳DF伊藤洋輝 ただ者ではない“どっしり感”、光るゲームオーガナイザーの資質
バックアッパーの域を出ている伊藤、前の選手を動かすゲームオーガナイザーとなれるか
マテラッツォ監督に「2-0となった後、具体的なプレーとして『守備陣からFWへのくさびのパス』がもっと入ることを望んでいただろうか?」という質問をぶつけてみた。というのも、立ち上がりからバラバラだったヘルタの守備が前半終盤から整いだし、シュツットガルトが上手く崩せるシーンが減ってきていたからだ。
「バランスを上手く見つけてくれることを望んでいた。ショートパスでの組み立て、ボランチにパスを入れての前進、ダイアゴナル、相手守備裏へのパス。ピッチ全体のスペースを上手く使うのが自分たちのサッカーだ。ダイレクトにFWへ当てる縦パスに関しては、他との関連もある。ヘルタはコンパクトな守備をしていた。そうなるとシンプルにグラウンダーのボールをセンターのエリアへ送るのは難しくなる。だからこそ、バランスを望んでいた」
慌ててシュートに持ち込もうとするのではなく、それこそ伊藤のビルドアップ能力を上手くチームとして活用することも求められていた。ふわっとしたボールではなく、逆サイドの深い位置へ鋭いダイナミックなパスを送ることができるし、左WBボルナ・ソサに丁寧にボールを預けることができる。オーバーラップから前線へ顔を出すことだってできる。
16節バイエルン戦では0-5で大敗とはなったが、伊藤は左WBでスタメンフル出場を果たし、いくつかビックチャンスに絡むなど上々のパフォーマンスを披露していた。主力欠場時に穴を埋めていたバックアップメンバーの域はとうに出ている。
伊藤が味方に合わせるのではなく、これからは主力の1人として前の選手を動かしていくゲームオーガナイザーとしての活躍を期待したい。それができるだけの資質はすでに証明しているではないか。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。