平岡エスパルス“らしさ”で5試合ぶりの勝ち点3 チームに変化を与えた指揮官の手腕

前任者たちへのリスペクトも忘れていない平岡監督

 輝いたのは、この3人だけではない。2試合連続ゴールを決め、ゴールだけでなく体を張ったボールキープで攻撃の時間を作ったチアゴ・サンタナ、効果的なオーバーラップからの攻撃参加を見せた両サイドバックのDF原輝綺、DF片山瑛一、鈴木義とのセンターバックのコンビを初めて組み、ほぼノーミスで古巣広島の攻撃を防いだDF井林章らの働きも際立った。

 ボランチのMF松岡大起は両チームトップの走行距離で攻撃の芽を摘み取り、広島を前半シュート0本に抑え、MF竹内涼はいつも以上の気迫でボールを追いかけていた。そして、厳しい状況の中、日本代表から帰還したGK権田修一がその実力を発揮し、後半の広島の反撃から清水ゴールを死守した。

 ただ、やはりこの試合でこれだけチームに変化を与えたのは平岡監督だろう。明らかに以前とは選手たちの動きに違いがあり、選手の特徴が出ていたと感じたが、平岡監督は「それはロティーナ(前監督)さんの時も同じだったと思うので、それから『少しテンポを上げましょう』という話でやっている。見た目は『変わった』とか、『全然違う』と思われるかもですが、そういう意味ではロティーナさんがやって来たこと、イバン(パランコヘッドコーチ)がやって来たことが継承されている」と前任者たちへのリスペクトも忘れていない。

 そして、平岡監督らしさは選手交代にも表れていた。前節に貴重な同点弾を決め、「残留のキーマン」になるのではと思われたMF滝裕太は5人の交代枠を使い切ったなかでフィールドプレイヤーとしては唯一、試合に出場することはなかった。

 後半30分の場面ではダメ押し点が欲しい時間帯ではあったが、追加点を狙いつつ、フィジカルも強く1対1の守備にも定評がある特別指定選手のDF山原怜音をサイドハーフで起用した。どうしても前節のことを考えればもう1度、愛弟子である滝の活躍に期待したいところだが、冷静に状況を判断しての交代だったのだろう。その後の勝負時と判断した同39分には19試合ぶりの出場となるDFエウシーニョをはじめ、MF中村慶太、FWディサロ・燦シルヴァーノの一気の3枚代えでゲームを締め、5試合ぶりの勝ち点3を、16試合ぶりの無失点で飾った。

下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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