「身長の低さは弱みにならない」 米大学屈指のGK高瀬和楠、海外で成功するために必要だった資質とは?

好セーブを見せるGK高瀬和楠【写真:本人提供】
好セーブを見せるGK高瀬和楠【写真:本人提供】

重要だったメンタルの強さ、文句を言われる環境で「相当鍛えられた」

 プレーにおいて、ゴールを守る最後の砦であるGKに瞬発力や反射神経が求められることはもちろんだが、体格の大きさも求められる資質の1つと言っていい。しかし、高瀬は身長183センチとGKとしては特別大きいとは言えない。実際、米国で4年間プレーして毎年新しいGKも入ってくるなかで、高瀬よりも背が低いGKは1人もいなかったという。

 これは大きなハンディキャップにも思えるが、高瀬はプレーの質でこれをカバーしたという。「大事なことはシュートを止められるか止められないか、クロスに対してしっかりと出ていけるかどうかです。練習や試合を通じてそれを証明することができていたので、身長の低さが自分の弱みになることはなかったです」と力強く語った。

 渡米直後は課題だった英語力も3年生を迎える頃には格段にアップし、出場機会も増えてきた。後にリーグ(AAC)のベストGKに選ばれる高瀬が、アメリカの大学生活で最も成長を感じた部分として挙げたのがメンタルの強さだ。クロスに対して恐れずに出ていくことも、メンタルの強さがあってこそ。高瀬自身も「メンタルが成熟していなかったらどこかで気持ちが折れていたかもしれない」と振り返っている。時に理不尽を押し付けられる厳しい環境で生き残るためには必要不可欠な要素だった。

「GKは他のフィールドプレーヤーに比べて、自分の実力を示すまでに長い時間が掛かるポジションだと思っています。コミュニケーションが重要なのもありますし、チームメイトとの関係を作り上げるのにも時間が必要です。そこがGKならではの難しさがあるので、米国でそこにたどり着くまでに精神面は鍛えられたのかなと思います。

 日本にいた頃はGKがミスをしても周りから責められることはあまりなかったですけど、アメリカに来てからはミスをしたら文句は散々言われるし、DFのミスで点を決められたとしてもDFが自分のせいにしてくることもよくありました。最初の頃はそうやってミスをなすりつけられても僕が英語で言い返すことができないので、ミスをなすりつけられる標的のような状況にもなっていました(笑)。最初はその負の連鎖にハマってしまって……。徐々に英語が身に付いて言い返せるようになってからは抜け出すことができましたけど、そういう経験を通してメンタルは相当鍛えられましたね。

 GKに求められることに関して言うと、技術的な部分は日本でも海外でも大きな差はないと思います。ボールを止める能力はもちろん、ビルドアップの面などは世界共通です。そうなると、やはりメンタル的な面でどれだけ戦えて、ピッチで自分を表現できるかというところが重要だと思います」

 その強靭なメンタルを武器に米国大学サッカーでリーグ(AAC)最優秀GK賞に輝いた高瀬。これから海外を目指そうとしている日本人GKに多くの勇気を与えたはずだ。

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