「サポートを受けすぎ」 ドイツ指導者が語る育成の鍵、充実環境のメリット&デメリット

U-17ドイツ代表の選手たち【写真:Getty Images】
U-17ドイツ代表の選手たち【写真:Getty Images】

【ドイツ発インタビュー#2】マインツ・セカンドチームコーチのペッシュ氏を直撃

 育成年代の施設は世界中どこも充実し始めている。ブンデスリーガの育成アカデミーを視察しにいくと、それこそ各学年トレーニングでグラウンド1面を使用できるところもある。育成専門のフィジカルコーチ、マッサージ士、心理療法士、メディアトレーナー、教育係と様々な専門家がサポートをしている。日本でもこうしたトップレベルの環境整備は進んできている。

 そうした環境の充実が選手の成長にもたらすメリットはもちろん大きいだろうが、同時にサポートをすればするほど子どもたちが成長するというわけではない。むしろデメリットが出てきてしまうこともあるのだ。

 育成現場の最前線で関わる指導者は、どのように感じているのか。ドイツのマインツ・セカンドチームでコーチを務めるシモン・ペッシュ氏に話を伺った。(取材・文=中野吉之伴/全3回の2回目)

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「僕らマインツもそうだけど、U-17、U-19ブンデスリーガの選手を見ていると、みんなサポートを受けすぎだと思うんだ。

 かつてマインツで監督をしていたトーマス・トゥヘル(現チェルシー監督)がこんなことを言っていた。『育成指導者をしていた時、選手にとってベストの条件や環境を作り出すことで、週末ベストの結果を出せるんだと思っていた。ただプロの世界で監督を続けていくなかで、選手は困難な状況でも戦えなければならないということを大事に思うようになったんだ。環境が整っていないなかでプレーすることで確かな抵抗力を身につけることができる』。

 上を目指す選手にとって大切な環境というのは、U-19チームで複数のフィジオを準備したり、専用サウナがあったり、専門のビデオアナリストをつけることじゃない。選手がもっと自分から関わるような状況を作ることこそが大事だ。『トレーニングを自分たちでオーガナイズする』『準備や片づけをする』『ユニフォームを自分で洗う』『フィジオは週に1回』。それでも確かなパフォーマンスを出すことができるようになることが大切なのではないだろうか」

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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