「サポートを受けすぎ」 ドイツ指導者が語る育成の鍵、充実環境のメリット&デメリット

「素晴らしいテクニックの持ち主が求められるわけではない」と語る理由

 育成アカデミーにいる選手が、全員プロ選手になれるわけではない。それこそU-23に残ってもほとんどは次のキャリアを探さなければならない。それぞれにとって最適な進路を探すうえで、「マインツの育成でプレーをしてきたということが、のちの人生において大きな財産になるか」というのはとても重要なテーマだ。そのための環境作りと選手への働きかけをこのクラブは大切にしている。

「マインツのメンタリティーというのは、情熱、感動、熱狂なんだ。それはクラブの歴史にも関わってくる。ものすごく長い伝統があるわけではない。1999年まで2部リーグにいたクラブだ。金銭的な状況からもライプツィヒのように多額の投資はできない。だからこそ、選手の人間性というのが重要視されているんだと思う。

 うちに抜群の才能を持った選手が入ってくることはない。そんななか僕らが武器としているのは、そこから這い上がってくるメンタリティーを持った選手たちだ。スカウトや指導者はそのあたりを見て探している。マインツのトップチームも1部残留が目標だ。そこでは観客を魅了する素晴らしいテクニックの持ち主が求められるわけではない。どんな時でも諦めずに走り続ける、謙虚であり続ける。そうした選手が重要だ」(ペッシュ氏)

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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