サッカーで「心を動かす」 プロ生活2年の元Jリーガー、浦和で確立した育成指導の哲学

渡辺がプロ選手になることを誓い、荻野清明監督に鍛えられた浦和高校のグラウンド【写真:河野 正】
渡辺がプロ選手になることを誓い、荻野清明監督に鍛えられた浦和高校のグラウンド【写真:河野 正】

地元から愛されるクラブへ、地元少年団の指導者とも精力的に交流

 旧浦和市内の複数の高校サッカー部にも顔を出し、監督やコーチの相談に乗っては実技指導もこなす。「浦和と名の付く高校に強くなってほしい」との願いからだ。地元少年団の指導者とも精力的に交流している。

 1995年の全国高校総体で準優勝した西武台の主力だった埼玉平成高校の三島伸也コーチは、今治モデルと岡田メソッドに強い関心を抱き、数十回も今治市に足を運んだ。

 活動範囲は浦和周辺にとどまらない。探求心の旺盛な指導者に力を貸したいという渡辺は昨年、県西部の毛呂山町にある埼玉平成高校を訪ねた。川崎フロンターレなどで活躍した同校サッカー部の浦田尚希監督は、「ありがたかった。渡辺さんはとても誠実な人柄ですね」と感謝した。

 地域と仲間に惜しみなく愛情を注ぐ好漢は、クラブが描く『浦和を背負う責任』を忠実に粘り強く実行する働き蜂のような人である。浦和高校サッカー部時代の恩師、荻野清明さんは「勝ち負けなどを超越し、地元から愛されるクラブとプロのスポーツ文化をつくってほしい」と、これからの渡辺に期待した。(文中敬称略)

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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