“バブル崩壊”バルサ、負債額1755億円の衝撃 苦難直面も…“ソシオ制”維持の姿勢に期待

バルトメウ前会長の放漫経営が指摘されている【写真:Getty Images】
バルトメウ前会長の放漫経営が指摘されている【写真:Getty Images】

日本のバブル崩壊を思い出させるバルトメウ前会長の放漫経営

 そして、この会見を聞いてまず「どうしてそうなる?」と強く思ったのは、トップチームの人件費だけで「総収入の103%に達している」という発言だ。これはもう常軌を逸しているとしか言えない。足し算引き算の問題である。予算組みをしなかったのか?

 古い話であるが、80年代半ばからの日本の「バブル経済」を経験した年代の方々なら鮮明に記憶していると思うが、「住専問題」というものがあった。バブルで土地の値段が驚異的に跳ね上がったが、地価が下落し始めると急速に土地の担保価値も下落した。もちろん、そうなると土地は売れなくなる。誰だって仕入れた金額以下で物は売らない。そしてその皺寄せがすべて融資元の住宅金融専門会社、いわゆる「住専」に行った。

 最終的には担保とした土地が次々と不良債権となり、確か最終的には6兆円を超えたと思うが、1995年、本当に天文学的としか言えない負債が発覚し、事実上ここで昭和末期に発生したバブル経済が破綻した。

 今回のバルセロナの負債にも、あの住専問題に似た理不尽さを感じた。降って沸いたようなバブルの渦中にいて、金銭感覚が狂う。6度もバロンドールを取ったメッシは神格化され、毎年、毎年、売り上げは増えるばかり。そんな金額に気が大きくなり、自分も大物だと錯覚する。だから金に糸目をつけない移籍金提示、莫大な給料もなんのその。それで今季の総収入を超えたとしても、どうだというのだ。来季にはまた、どんどん金が転がり込んでくる。

 しかし、こうした“バブル”には必ず終焉が訪れるものだ。もちろん新型コロナウイルスの影響もあっただろうが、総収入を超える人件費を払っていれば、崩壊は当然。もらっているお小遣い以上にお金が使えないことは、小学生でも分かる。

 このバルセロナの危機は英国でも大々的に報じられているが、この国での報道を追っていると、今後はバルトメウ前会長の不正の実態に焦点が集まりそうだ。

 当の前会長本人は、ラポルタ会長会見の2日前となる14日、公開書簡で「10月に辞任に追い込まれていなければ現在の危機的な状況は免れた」と主張した。しかし、ここまで不透明な経理と莫大な負債が明らかになれば、近い将来、様々な疑惑に真摯に答えなければならない事態に直面するはずだ。実際、ラポルタ会長は「不当な経営を正当化するためのなりふり構わない努力」と語り、バルトメウ前会長の公開書簡を一蹴。さらには「責任逃れをすることはできない」と続けて、追及の手をさらに伸ばすことを示唆している。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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