「横浜FCオリジナルビール」誕生の舞台裏 サポーターの声を反映…地域活性化への挑戦

スタジアムで応援する横浜FCのサポーター【写真:Getty Images】
スタジアムで応援する横浜FCのサポーター【写真:Getty Images】

コロナ禍の苦悩乗り越え、わずか4時間で300セットが完売に

 オリジナルビールの発売に至るまでには多くの苦悩もあったが、それらを乗り越えての今がある。サポーターのフレーバーアンケートも当初はニッパツ三ツ沢球技場で行われるはずだった。しかし、これは緊急事態宣言の発令に伴い、中止となった。

 それでも20年6月には横浜FCのオリジナルラベルのビール6種類飲み比べセット「KICK OFFラベル」を通販限定で販売すると、300セット(1800本)が発売開始からわずか4時間で完売に。竹内氏曰く「今までの経験からするとありえない」驚異的な売れ行きで、再販を望む問い合わせも殺到した。

 同年10月にはオリジナルラベル商品の第二弾となる『YELL EXCHANGE』も発売。この時は飲食チェーン『HUB』の協力の下、湘南ベルマーレと共同で「神奈川ビールダービー」というイベントも開催された。コラボ商品の発売やイベントを通じて実際に体験してもらうことによって、横浜ビールがサポーターの中に浸透していく手応えを掴んでいった。

 横浜FCのビジネスマネジメント本部 ファンディベロップメントグループ担当部長・笠井祐介氏は、横浜ビールとのコラボレーションについて、サポーターとのエンゲージメントを高めていくことの重要性を強調している。

「私たちはクラブのためというよりも、サポーターのためのビール、サポーターに愛されるビールということを一番に考えてきました。横浜ビールさんとお付き合いが生まれたなかで、いきなりオリジナルビール発売となっていたら、サポーターに受け入れてもらえず、“自分たちのビール”という意識は根付きにくかったと思います。そこで私たちは企画を通じてサポーターの皆さんと一緒にファミリーとしてつくり上げていくことを大切にしました。クラブとしてもストーリー性のあるものを発信していきたいですし、もし受け入れられなかった時には横浜ビールさんにとってもマイナスになってしまいますから」

 さらに、横浜FCのビジネスマネジメント本部広報・プロモーション部 部長の松本雄一氏は、サッカークラブのサポーターならではのビールの楽しみ方が確立されていると話す。

「人によっては対戦相手をイメージして飲むビールを選ぶという人もいます。SNSを見ていると、例えば対戦相手のチームカラーが黄色だから(黄色いラベルの銘柄)ヴァイツェンにしたなんて声も目にします。サポーターがビールを飲む時の新しいシーンをつくり出しているんだなと感じています」

 これは横浜ビールにとっては目からウロコだったようで、竹内氏は「ビールを対戦相手に見立てるという、私たちが想像していなかったような楽しみ方が生まれている」とサポーター発の新しいビール文化に驚きつつも、「横浜FCさんに道筋をしっかりと示していただいて本当にありがたかったです。『まずはこうやって横浜ビールのことを知ってもらいましょう』とアドバイスを頂いて、まさしくおっしゃっていたとおりになっています」と感謝を述べている。横浜FCと横浜ビールの二人三脚が、そこにサポーターも巻き込む形でより良い関係性が築かれている。

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