“サイドバック槙野”に見るハリルJ進化への挑戦 高さとデュエルを強化した世界仕様の戦術構築へ

「守備あっての攻撃と常に言われている」

 これまで日本代表の左サイドバックは、インテルの“エースキラー”長友佑都が務めてきた。しかし、長友は所属のインテルでも左右両サイドでプレーしているように、右サイドでのプレーも可能だ。そこで長友など、これまでの左サイドバックと比較した時に、センターバックを務められる高さとフィジカルを持つ槙野の起用が浮上している。左足でのクロス精度などでは明らかに見劣りするが、自陣で相手の攻撃を受ける展開になれば、その高さと強さがハリルジャパンの新たな武器になる可能性を秘めている。

「最終予選に向けても、これからレベルの高い相手と組むわけで、自分たちが常にボールを保持する時間はなくなるだろうし、そういう意味では守備のところ、シリア戦は勝ちましたけど、そのなかでもできていない時間帯について非常に厳しく言っていましたし、監督は守備があってこその攻撃と常に言っています」

 今回のキリンカップでは初戦にブルガリア、その後にデンマークあるいはボスニア・ヘルツェゴビナと、いずれもヨーロッパ勢との対戦になる。これまでハリルジャパンが戦ってきた東アジア勢や、ワールドカップ・アジア2次予選で対戦した国とは、フィジカル面で大きな差がある。そうした相手と対戦する際のオプションとして、高さと強さのある4バックを構成し、前線のタレントをシンプルに生かすという戦い方が浮上する。また、これがうまくハマればアジア最終予選で戦うオーストラリア相手にも、採用されることが考えられそうだ。

 その一方で、所属の浦和では3バックの一角でありながらも積極的な攻撃参加がトレードマークになっている。「ただ、守備のところばかり重視していてもあれですし、長友選手と比べるとおかしなことになりますけど、攻撃にも顔を出していかないといけない。ゴールに絡むプレーも出していかないといけないと思います」と、ハリルジャパンにおいても攻撃参加を完全に封印するつもりはない。

 就任2年目に突入しているハリル監督は、アジア仕様のチームからその枠を広げようと試みていることがうかがえる。”サイドバック槙野”はその第一歩として、「対世界」を見据えた今後のオプション構築へとつながる重要なテストになりそうだ。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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