F・トーレスを再生させた情熱の指揮官シメオネ “たった一言”の真実とは

なぜリスクを承知でトーレスを獲得したのか

 彼の復帰に際しては、こんな意見もあった。

「彼はアトレチコにとってパーフェクトな選手。シメオネはカウンタースタイルでプレーすることを好むが、トーレスはクラブにも彼のシステムにも完璧にマッチする」

 言葉の主であるジョゼップ・グアルディオラが言う通り、ともにカウンター型という点で非常に相性が良いのだ。勢いに任せた突破力が最大の武器であるトーレスにとって、堅守速攻スタイルで戦うアトレチコは自身のパワーとスピードを発揮するためのプレースペースを存分に享受できる、絶好のプレー環境だといえる。

 しかし、同様の環境は昨季までのチェルシーにもあったはずだ。その環境下でも結果を出せなかったからこそ、監督のジョゼ・モウリーニョは彼に見切りをつけ、くしくもアトレチコのエースであるジエゴ・コスタを引き抜いたのではなかったか。

 モウリーニョの選択からも分かる通り、言ってしまえば今のトーレスはコスタの劣化版にすぎない。そして劣化版に正規版と同じ活躍を求めれば、無理が生じてしまう可能性は高い。しかもそれが絶大な人気を誇る元エースであれば、空振りに終わった際に生じるファンの失望も大きくなる。クラブとのつながりが強いことは、場合によっては足かせになる危険性も秘めていたのだ。

 しかし、そういったリスクを承知の上でアトレチコはトーレスの獲得に踏み切った。中でも彼に執着したのはシメオネだったという。トーレスとの契約が決まってほどなく、エンリケ・セレソ会長は言っていた。

「シメオネは、これまで我々に何かを求めてきたことはほとんどない。だが、トーレスは要求してきた」

 

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