東京五輪のキーマンは“スピード系”アタッカー? 3人のOA選考から推測する日本の狙い

スピードを武器に得点を狙うFW田川亨介、FW前田大然【写真:Getty Images & 浦 正弘】
スピードを武器に得点を狙うFW田川亨介、FW前田大然【写真:Getty Images & 浦 正弘】

【識者コラム】6月の強化試合に守備を意識した3人のOAを選出

 IOC(国際オリンピック委員会)の人が「緊急事態宣言下でも五輪はやる」と発言していた。日本がどういう状態でも知ったことではない――という意味にとられかねない発言だが、実際そういうことなのかもしれない。だって、緊急事態だよ?

 ともあれ東京五輪への準備は粛々と進められているようで、サッカー五輪代表男子の候補メンバーもかなり絞られてきた。6月の強化試合にはオーバーエイジも含まれている。吉田麻也、遠藤航、酒井宏樹とかなりガチな3人が選出されている。

 本大会では6月の招集メンバーからさらに絞り込まれて18人になる。五輪はワールドカップ(W杯)と違って18人編成なので、2チーム分の選手を揃えることはできない。つまり、複数のポジションをこなせる選手が重要になる。

 中山雄太、板倉滉、古賀太陽、旗手怜央、町田浩樹など、後方の選手にユーティリティープレーヤーが多い。そして、4-2-3-1を基本フォーメーションとすると、前方の3-1にはオーバーエイジの選手を選んでいない。4バックの3人は酒井、吉田、冨安健洋とA代表メンバーになるわけで、守備を意識している選考と言えるかもしれない。

 森保一監督はA代表と五輪代表を兼任してきた。A代表と五輪代表の融合は当初からの強化プランだ。東京五輪に選出される15人のU-24メンバーは、そのままA代表の有力候補と考えていい。ただ、五輪代表が即A代表のレギュラーかというとそうではない。

 3月に行われた韓国戦のメンバーで言うと、前方の4人は大迫勇也、伊東純也、鎌田大地、南野拓実がファーストチョイスで、W杯予選のモンゴル戦でもこの4人だった。五輪候補にも堂安律、久保建英など、すでにA代表に選出されている選手がいるが、A代表でレギュラーポジションを確保しているわけではない。つまり、五輪代表で控えなら、A代表に融合した時には3番手以下の序列になる。

 それからすると、1トップに4人選んでいるのは多すぎるように見える。上田綺世、田川亨介、前田大然、林大地の全員が東京五輪メンバーの18人に入るとは考えにくい。アタッカーは負傷リスクがあるとはいえ、1つのポジションにせいぜい2人までだろう。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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