日本サッカーの弱点を補う要素に? 欧州で40年前から起きる人種的多様性の波

21世紀になりドイツ、イングランド、イタリアも多様性を獲得

 センターバック(CB)左側のサミュエル・ウムティティは左利き。11のポジションの中で、左利きが必要なのがこの左CBである。左サイドバック(SB)もそうだが、現在は「偽SB」として役割が多様化しているので、むしろ利き足は問われなくなった。ただ、フィールドの後方左側では、左足側にボールを置いて蹴れるほうが、視界の面でもパスの射程距離でも右利きより断然有利なのだ。右側でも同じことだが、右利きは数が多いので問われるのは左利きの有無になっている。

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 フランスは移民系の選手たちに支えられてきた。1950年代は東欧と北アフリカ、70~80年代はイタリア、スペインの近隣諸国に旧植民地からの移民。90年代以降はアフリカ移民。その都度、多様性を増して現在の姿になっている。ヨーロッパでの多様化はベルギーとフランスが早かったが、21世紀になるとドイツ、イングランド、イタリアも同じように多様性を獲得した。

 長年、日本の弱点はGKとCBだった。このポジションには体格や身長が必要だからだ。しかし、ここにきて若い世代の日本代表には必ずと言っていいほど外国人を親に持つ選手が含まれていて、だいたい従来では想像もできなかったほどの高身長になっている。すでにJリーグでプレーする選手も出てきた。

 日本、メキシコ、アイスランド、スウェーデンなど、均質的なチームの良さもあるが、W杯で多様型のチームが有利なのは明らかである。かつて日本サッカーの重鎮だった人が、「日本が世界で伍していくには?」と聞かれて「国際結婚を増やすこと」と答えた。半分冗談だったのかもしれないが、それから50年ほど経ってみて本当にそうなりつつあるわけだ。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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