J2長崎の新スタジアム建設が本格始動 街づくりと一体、民間企業が目指す“世界観”

商業施設などを併設し試合開催日以外も街としての賑わい創出を目指す(構想段階のため今後デザインを含め変更になる可能性があります)【画像提供:ジャパネットホールディングス】
商業施設などを併設し試合開催日以外も街としての賑わい創出を目指す(構想段階のため今後デザインを含め変更になる可能性があります)【画像提供:ジャパネットホールディングス】

目指すのはヨーロッパ型のスタジアムと希少価値の高いチケット

 なんと言っても、新スタジアムのウリは、「自分たちの色に染められること」だ。日本のスタジアムはほとんどが公共施設であるため、クラブの自由には使えない。しかし、新スタジアムは100%自分たちのスタジアムであるため、V・ファーレン長崎や、長崎に足を運ぶアウェイチームの色に染めることができるのだ。

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「我々はプレーヤーズラウンジと呼んでいるのですが、海外のスタジアムでは選手入場時の通路の真横がVIPラウンジになっています。壁がマジックミラーになっているので選手からは見えないのですが、お客さんはお酒を飲みながら選手が入場する緊張感溢れるシーンを見ることができますし、試合後の記者会見もマジックミラー越しに見ることができます。これはファンにとっては最高の体験になるのではないかと思っています。そういった体験は日本の他のスタジアムにはない、ここだけの貴重なものになるのではないかと思っています。

 それにスタジアムツアーにも力を入れたいですね。試合を行っていない約340日はスタジアムツアーで使用することもできるので、ベンチやロッカールームもそれに合わせたスタイルになるのではないかと考えています。また、Amazonプライムで『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』というプログラムがありますが、ジャパネットも今年からBSの放送局ができるので、そういった映像を撮影して放送することも可能ですし、そういう世界観を目指していきたいですね」

 折目さん自身もヨーロッパのスタジアムを実際に視察で訪れ、日本との差を感じたことがある。

「サッカーの感動をお届けするのも大事ですけど、やはり我々は民間企業ですので収益化をきちんと考えなければいけません。ヨーロッパのスタジアムは『高いチケットを払ってでも行く価値がある』という世界観を持っています。『サッカー観戦』にはただサッカーを観るだけでなく、その場でしか味わえない食事やサービスなどの雰囲気全体が含まれていて、一日を通じた観戦体験に価値を感じ、お金を払う、というのがヨーロッパのスポーツビジネスだと思います。日本ではまだそこまで踏み込んでいるクラブはないと思いますので、我々がそういった世界観を生み出したいというのが、このプロジェクトでもあります」

 そして目指すのは、人気になって希少価値の高いチケットだ。現在、V・ファーレン長崎がホームスタジアムとして使用しているトランスコスモススタジアム長崎の座席数は約2万席。座席数を3万や4万に増やしてチケット収入を増やすこともできたはずだが、現時点での新スタジアムの座席数は約2万~2万3000席。「8割が年間シートで埋まり、残りの2割を当日券として販売する」というチケット販売を目指しているという。

 とはいえ、現実はそう簡単ではない。「実際にプロジェクトに携わっていて思いますが、スタジアムは事業性が良くありません。どう考えても試合開催だけで建設費を回収できるモデルではないんです」という。それでもスポーツの感動を伝えたい思いと、民間企業としての意地が見え隠れする。

「だからこそ、民間として絶対に成功させなければいけないプロジェクトだとも思っています。そして、成功体験が一つのモデルとして全国に広がっていったらいいなという思いを持って取り組んでいます」

 すべては県民の皆さんのために――。人口減少が続く長崎を、スポーツを通して元気に、活気ある街にする。そのために、長崎スタジアムシティプロジェクトがある。

「V・ファーレンはすでに長崎県で知らない人はいない人気クラブですので、今回のプロジェクトについても県民・市民の皆さんの関心が非常に高いと感じています。私たちはスタジアムシティを通してスポーツの感動や暮らしの楽しさを提供できればと考えていますし、スタジアムシティが皆さんの日常の一コマであり、週末の楽しみの場所になってくれれば、プロジェクトは大成功なんじゃないかなと思っています」

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