J2長崎の新スタジアム建設が本格始動 街づくりと一体、民間企業が目指す“世界観”

「長崎スタジアムシティプロジェクト」建設予定地の現在の様子【写真提供:ジャパネットホールディングス】
「長崎スタジアムシティプロジェクト」建設予定地の現在の様子【写真提供:ジャパネットホールディングス】

長崎の行政や関連機関と連携を取り試合開催時の混雑解消へ

 サッカー開催時には、どこのスタジアムでも人で溢れ、混雑する。随時、解消されてはいるものの、やはり騒音や交通渋滞は悩みの種だ。加えてバスケットボールとサッカーの試合開催日が重なってしまった時には、最大で約2万5000人が一カ所に集中することになる。すでに近隣住民を集めた住民説明会でも話に挙がっているというが、行政などと連携を取りながら今できる問題解決に取り組んでいる。

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「交通渋滞を懸念して、試合開催日には自家用車の乗り入れを極力抑える形にしようと考えています。また、長崎市にはこのプロジェクトに全面的なサポートをいただいているので、県警を含めて、交通渋滞を起こさないためにどうすればいいかを考えているところです。例えばパークアンドライドを行うための1000台規模の駐車場を探したり、シャトルバスの運行やバスの増便をバス会社さんと検討したりしています。もちろん実際に運用が始まってみないと分からないことも多いのですが、現在稼働している諫早のスタジアムで起きている交通渋滞や騒音問題の対応策などをV・ファーレンからヒアリングしつつ、今後もV・ファーレンと一緒に課題解決に取り組んでいく予定です」

 視察で訪れたヨーロッパのスタジアムを中心に、訪れた人の混雑度を緩和する仕組みの導入も視野に入れている。

「試合開催日は相当数の人が同じ時間帯に集中することが予想されますが、例えばヨーロッパではサッカー開催日は一日中お祭りのような賑わいを見せています。そこでキックオフの3~4時間前ぐらいからスタジアムシティに来て、商業施設で遊んでいただいたり、飲食をしていただいたりして滞在時間を長く取ってもらうことで、人が集中する時間のピークをずらし、人が混雑しないような仕組みができるのではないかと考えています」

 海外の施設で言えば、シンガポールのタンピネス・ローバースFCの本拠地であるタンピネス・ハブはスタジアムシティの構想に近い。「公共施設にはなるのですが、試合開催日以外でも日常的に使われている施設で、世界観や方向性が参考になるのかなと思います」という。スタジアムシティにはオフィスや商業施設も併設される予定だが、商業施設では親会社のジャパネットの強みを生かし、サッカーとバスケといったスポーツコンテンツを使った体験型の施設を予定している。

 また併設されるホテルは、イギリス・コベントリーにあるリコー・アリーナ(ロンドン五輪開催時はシティ・オブ・コベントリー・スタジアム)を参考にしている。コベントリーFCの本拠地であり、2012年のロンドン五輪で日本代表が試合をしたスタジアムとして知られ、ホテルやレストランが併設されている。「サッカー開催日はVIPボックスとして、普段はホテルの宿泊部屋として使用されているようなコンバート型のホテルで、そういう部分を参考にしたい」と考えている。

 他にも、ロサンゼルスにあるロサンゼルスFCのホームスタジアムであるバンク・オブ・カリフォルニア・スタジアム(約22,000席)は、「距離が近い分、臨場感がすごいので、スタジアム自体の作りはすごく参考にしています」という。2018年に完成したこのスタジアムは、ピッチとスタンドとの距離が約3.6メートルと世界で最も近いと言われている。

 また、ヨーロッパの多くのスタジアムで採用されているリボンビジョン(帯状の映像装置)もスタジアム中段に設置され、非日常感をたっぷりと味わえる音と光が溢れるエンターテインメント空間を作る予定だ。もちろんスポンサーアクティベーション(スポンサーの権利活用)でも使用可能で、例えば車を一周ぐるりとリボンビジョンを走らせるアイデアもある。ピッチに設置する看板広告よりも単価は高めだが、露出が増えることで回収できるモデルも考えていきたいと意気込む。

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