ペップ戦術の「集大成」 マンC、快進撃を導く“数的優位”作りのメカニズム

バルサやバイエルン時代に比べて柔軟性は高く、監督の色が出やすい

 ウルブス戦の幅とり役はポジション的には非対称だ。右側は右ウイングのマフレズ、左側はサイドバック(SB)のカンセロだった。カンセロに関しては右SBの時もあり、「偽SB」としての遊軍的な働きが今季のトピックスだったのだが、この試合ではほぼサイドに張りっぱなしだった。マフレズについては右サイドが本職だが、カンセロは変幻自在のポジショニングで新境地を拓いていたから適材適所という感じではない。役目としてサイドに張らせていたのだろう。ウルブスのフォーメーションとシティの先発選手を考慮した結果、本人には物足りないかもしれないが幅をとる役目がカンセロになったのだと思う。

 3バックと両サイド、DFの間に入るジェズスとスターリング。この7人で大きな楕円を形成して外枠を作り、その中にMF3人。いわゆる「ロンド」の形なのだ。

 相手のフォーメーションと起用する選手によって形は変わるが、相手ディフェンスラインを固定させ、外枠を作り、中央に数的優位を作るという手法自体は一貫している。バルセロナ時代のリオネル・メッシやバイエルン時代のロベルト・レバンドフスキのような絶対的な切り札がない代わりに、さまざまな選手をいろいろな役割で起用できるぶん、柔軟性は高い。監督の色がより出やすいシティは、ペップの集大成と言えるチームになっているのではないか。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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