コロナ禍で「Jリーグクラブができること」 大宮がオンライン配信で縮めた地域との距離

ホームタウン担当の金田紳也さんと広報担当の美馬彩子さんがお店を巡り撮影をした【写真提供:大宮アルディージャ】
ホームタウン担当の金田紳也さんと広報担当の美馬彩子さんがお店を巡り撮影をした【写真提供:大宮アルディージャ】

誕生のきっかけはYouTube企画『橙広場オンライン』のライブ中継

「『#アルディの大宮さんぽ』をツイッターで走らせながら、Jリーグが再開するにあたって、2020シーズンのホームゲームをオンラインで再現しようと、『橙広場オンライン』をYouTubeでスタートさせました」

 そう語るのは、広報担当の美馬彩子さんだ。Jリーグ再開当初は無観客での開催、その後は来場人数を調整しての開催となったため、なかなか試合の臨場感を得られにくい。そのため、オンラインで疑似体験できるような施策はできないかと考え、通常開催時と同じタイムスケジュールで試合前のイベントなどを行い、試合自体は副音声で解説を配信したのが、YouTube企画『橙広場オンライン』だった。

 そのなかの一つに、「やってみたら面白いんじゃないか?」とクラブスタッフが街に出て、飲食店で食レポをするライブ中継のコーナーが生まれた。それを担当したのが金田さんだった。

「当時は試合が再開できても、食べ物を食べる行為、すなわちスタジアムグルメは再開できなかった。そこで『橙広場オンライン』のなかで、スタジアムの外で街の飲食店に行ってみたらどうかというアイデアから始まりました」

 その後、このコーナーが独立する形で、試合日にクラブ公式ツイッターで配信され、YouTubeにも公開された。

 そもそも、なぜクラブスタッフの金田さんが動画に登場することになったのか。その理由は「橙広場オンライン」で紹介した大宮駅のルミネにあるうなぎ屋さんが、金田さんが知っているお店だったから。「紹介するお店を決めるまでの時間が3日ぐらいしかなくて。それでたまたま僕が知っていたお店にご協力いただいたので、僕が出演することになったんです。でも、別に僕が出続けなくても良かったはずなのに……。最初に僕が出ちゃったので、その後も出るはめになってしまったんです」という出演の経緯があった。

「僕じゃなくてもいいでしょう」という思いは、金田さんのなかにずっとあった。それでも、「撮影自体も楽しかったし、知らないお店に行ったり、地域のお店の方とお話したりするのも楽しかった」という。

「正直、この企画をやることで飲食店の売上がすごく上がるわけではないと思うんですけど、それでもお店の方も喜んでくれましたし、地域のお店を盛り上げようとしてくれているんだなと好意的に受け取ってくださって。それで途中から、めちゃくちゃ楽しくなってきたんです」

 取材に出向くのは、金田さんと美馬さんの2人。チェーン店ではない地域のお店で、できるだけスタジアムに向かう途中にある飲食店を選んだ。クラブスタッフ同士のグループチャットワークで「この店どうですか?」と相談したり、他のホームタウン担当スタッフからも取り上げてほしい店を募ったりするなど、スタッフ同士で協力しながら選定した。取材する時間帯はランチ営業後か、夜営業の開店前。デリバリーやテイクアウトなど、混雑時間帯を避けて行った。「定番メニューが多かった」(美馬さん)という紹介するメニューも、「お店の良さが分かるものを選んで、お店側と相談しながら決めていった」という。

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