奇跡の復活後も試練の連続 不屈の海外日本人アタッカーが自らの生き様に込める思い

ルーマニアでは3カ月間、必死にサッカーと向き合う生活を過ごした【写真:本人提供】
ルーマニアでは3カ月間、必死にサッカーと向き合う生活を過ごした【写真:本人提供】

タイの環境が合わず、モンゴル2部ホルムホンFCと契約するもコロナ禍で渡航を断念

 ルゴジュとの契約満了後には、サッカー熱が高く、国内リーグも成長を続けているタイヘ。「生活環境が良いと聞いていたので、自分の価値として見えやすい給料のアップも今後見込めるかもしれない」との思いで4部フアヒン・シティFC、3部カンペーンペットFCのトライアウトを受けたが、不運にもタイの環境が合わなかった。

「一刻も早くタイを出たい」

 心が折れかけていた伊藤はタイ滞在中、モンゴル2部のホルムホンFCへプレービデオと経歴書を送付。1部復帰を目指すチームから必要とされ、冬の寒さが厳しいモンゴルゆえに、トライアウトを経ず、「オンラインでのサインでダイレクトイン」という形で、2020年1月末に自身初のプロ契約を結んだ。

「モンゴルは1部も2部も同じスタジアムで試合をやるから、良いプレー映像が撮れると聞きました。サッカーのレベルは絶対に落ちると言われましたけど、今後に自分を売り込む時に、良い映像はマイナスにはならないという判断で契約しました」

 しかし、日本に一時帰国して、モンゴルへ行くための準備を始めた頃に新型コロナウイルスの感染が一気に拡大。3月に予定していた渡航予定日を前に、モンゴル政府から全航空便の運航停止措置、外国人の入国規制措置が取られ、1カ月延期と通知された。さらに1カ月延期、その次には7月15日まで延期と告げられ、リーグは本当に開幕するのか、伊藤は不安に襲われた。仮に渡航できたとして、隔離期間を経ればコンディションは落ちるし、次につながるような良いプレーはできないかもしれない。持病のこと、帰国できなくなるリスクを踏まえ、伊藤は8月、ホルムホンFCに契約解除を申し出る苦渋の決断を下した(モンゴルは今なお渡航禁止で入国不可)。

 今年は日本で渡航費などの資金を貯め、コンディションを高い状態で保って、2021年の準備をする形に切り替えた伊藤。新たにエージェントも雇い、現在は再びヨーロッパで挑戦したい思いが強まっているという。

「今はフィンランドに行こうと思っています。コロナ禍に、『なんでサッカーを始めたんだろう』『最初に憧れた選手は誰だったか』と考える時間がありました。インテル時代のディエゴ・フォルランを好きになって、選手としてチャンピオンズリーグのアンセムをピッチで聞くのが夢だったなと思い出したんです。どうせ挑戦するなら、自分の憧れたところを目指してやりたい。今はチャンピオンズリーグ予選を一つの目標にしています。ビザが厳しいですけど、いつかはプレミアリーグでプレーしたいです」

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