「走らないスーパースター」の是非 “守備をしない”メッシやC・ロナウドは「怠慢」か

守備の面で批判されているバルセロナFWリオネル・メッシ【写真:AP】
守備の面で批判されているバルセロナFWリオネル・メッシ【写真:AP】

【識者コラム】守備ができないFWは“論外”の現代サッカーで、例外だった3人

 リオネル・メッシが「守らない」「怠慢だ」と批判されている。SNSに上がっていた問題の映像を見たら確かにひどいものだ。

 目の前を相手選手とボールが通過していくのをただ眺めているだけ。その前の流れが分からないのでこれだけで判断はできないが、メッシが守備をしないのは今に始まったことではない。同じくらいのタイミングでクリスティアーノ・ロナウドも「手抜き」と批判されていた。

 現代サッカーで守備ができないFWは論外になった。リバプールの3人(サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ、モハメド・サラー)を筆頭に現代のFWは実に献身的に守備をする。ただし例外はあるもので、メッシ、ロナウドとズラタン・イブラヒモビッチがそうだ。この3人はチームメートが守備のために懸命に走っている時にフィールドを散歩している。彼らのいるチームは守備で人数が1人足りないハンデを負っているわけだ。

 なぜ、そんな選手が許されてきたかというと、べらぼうに得点できるから。強いチームのエース級でも年間得点はせいぜい30ゴールだが、彼らは40ゴールをゲットし、時には50ゴールも叩き出してきた。それだけ点を取り、勝利に導いてくれるから、守備はしなくてもまあしょうがないという扱いになっている。

 確かに彼らは素晴らしい選手だが、もう少し守備をしてもいいんじゃないか?

 こうした当然の疑問を投げかけられると、ヨハン・クライフがいつもこう答えていたのを思い出す。

「走る選手は良くない選手だ」

 クライフらしい答え方だ。まず質問に直接答えていない。さらに、走る選手は良い選手という世間一般の認識を覆すことを言っている。

 クライフにとって、走るのはボールであって人ではない。そして、ボールを縦横に走らせるには、人が走りすぎてはいけない。だから「走る選手は良くない」し、走るチームも良くない。ただ、この持論はスーパースターが守備をしなくていいのかという疑問にはまだ答えていない。

「例えば、この部屋を1人で守れと言われても今の私には無理だ。だが、この座っているソファの幅なら守れる」

 これもクライフの常套句で、相棒のカルレス・レシャックから同じセリフを直接聞いたこともある。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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