レ-ヴの流儀-ドイツ代表最強時代へ

reve2  準決勝でイタリアに敗れたEURO2012後、ゲルハルト・マイヤーDFB名誉会長が、国歌を歌わない選手を問題視し、「彼らはドイツ代表を辞退すべき」との見解を示した。DFBやスポンサーとも非常に良好な関係を築いていたレーヴだったが、これには
「『国歌を歌わなければ、良いドイツ人ではない』なんて、非常に不快な話だ。もちろん国歌斉唱は素晴らしいと思うが、それは選手の質を保証するものではない。また『歌わない選手は、ドイツ代表として戦うことに喜びを持っていない』などと、どうして言えるのか」
と、真っ向から反論している。
 選手を守るためなら、重鎮に対しても牙をむくような指揮官を頼もしく思わない選手などいない。そんなところも、部下を惹きつけるレーヴの人心掌握術だろう。 また、チームのレベルをより高めるためのある方針が、この7年間のうちにレーヴの中で確立されている。それは”経験“よりもあくまで”質“にこだわることだ。
「ある一つの認識が私の中に生まれた。それは『チームのメンバーの平均年齢は、比較的低くなければならない』ということだ。 なぜなら若い選手は、より負荷に耐えうることができるからだ。そしてその選手が高いクオリティーを見せるのならば、それは”経験“よりも優先される。 もちろんこれはあくまで私の主観だがね」
 EURO2008後にこう語り、平均年齢26.65歳だった同大会を境に、2010年には24.95歳、2012年には24.39歳とメンバーの若返りを積極的に行っている。
「若手が増えたW杯南ア大会では、速いテンポで、しかも絶え間なくプレーすることができた。 若い選手は肉体の回復が極めて早い。平均年齢が下がるということは、それだけチームの質を維持しやすいんだよ」
 ヨアヒム・レーヴのチームマネジメント力なくして、ドイツ代表がこれほどまでに発展することはなかっただろう。 役者はそろい、4度目のW杯優勝に向け、機は熟した。Löws-Elf(独語で「レーヴの11人」)は、今回のブラジルW杯でも優勝候補の最右翼だ。

【ヨアヒム・レーヴ/Profile】 1960年2月3日、ドイツ出身。SCフライブルグでプロになり、95年に35歳で現役を引退。シュットゥットガルトでヘッドコーチとなり、04年ドイツ代表のヘッドコーチになる。06年ドイツW杯後、クリンスマン代表監督の辞任にともない、代表監督に就任する。若手を起用し、チーム全体をレベルアップさせることに成功。08年ユーロで準優勝、10年南アフリカW杯で3位となり、つい先日、2016年までの契約延長に合意した。

  文:鈴木智貴
写真:千葉格

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