サッカー選手の“本当の上手さ”とは? 南米に渡った日本人が痛感、心技体は「心が90%」

2006年の記念試合でのディエゴ・マラドーナ氏(右)と亘崇詞氏(中央)【写真提供:亘崇詞】
2006年の記念試合でのディエゴ・マラドーナ氏(右)と亘崇詞氏(中央)【写真提供:亘崇詞】

【亘崇詞の“アルゼンチン流”サッカー論|第3回】指導者として掲げるテーマは「サッカーで食べていける選手を育てること」

 現在女子の3部に相当する「プレナスチャレンジリーグ」の岡山湯郷Belleで指揮を執る亘崇詞が、最も重きを置いているテーマは「サッカーで食べていける選手を育てること」である。それは世界中に散って活躍する選手を、次々に輩出し続けているアルゼンチンの現状を知るからこその哲学とも言える。

「食べていけるというのは、世界のどこへ行っても順応できる力を養うということです。例えば不謹慎だとの誹りを受けるかもしれませんが、この先コロナ禍でJリーグが開催できなくなったとしても、きっとブラジルやドイツでサッカーの試合は止まらない。日本で相撲が相当なことがない限りストップがかからないのと同じで、それは国技であり文化だからです。もし日本でできなくなったら外へ行きなよ、と送り出す。それは指導者も同じです。日本に指導の場がないから終わりじゃなくて、どこへ行っても教えられるようにならなければいけない」

 亘は今までも視野を広げ、刺激を与えるために極力国際経験を取り入れてきた。

「中国女子2部のチームを指導していた頃は、中国やインドネシア代表との試合を組み、日本遠征をしてジェフユナイテッド市原・千葉レディースやちふれASエルフェン埼玉と対戦しました。岡山湯郷でも非公式ながら中国、台湾やベトナム代表、あるいは水原(韓国)と試合をして、世界との違いを感じてもらい、世界で雇ってもらうためには何が必要なのかに気づいてもらおうと試みてきました」

 海外でプレーするということは、助っ人として求められることを意味する。それはアルゼンチンへ渡ってプロ契約に漕ぎ着けた亘ならではの発想だとも言える。

「本当に多くのことを学びました。球際の強さ、粘り強い守備、数少ないチャンスをものにする勝負強さ、狡賢さ(スマートさ)、判断のスピード……。しかし心技体では、心が90%だと教わりました」

 アルゼンチンでは「おまえは上手いけれどパーソナリティーが欠けている」と言われた。

「その頃はあまり意味が分かりませんでした。でも今は監督にも選手にもチームに影響を与える強い人間性が必要で、それがないと認められないんだと考えるようになりました。だからそういう自分に欠けていた部分を、将来無限の可能性を秘めた選手たちに少しでも伝えていきたいと思っているんです」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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