歴代スーパースターと“娯楽性” メッシ以上に興奮…“怪物”ロナウド、バルサ時代の疾走感

バルセロナ時代のFWロナウド【写真:Getty Images】
バルセロナ時代のFWロナウド【写真:Getty Images】

【識者コラム】メッシはスタジアムで見るより、スロー映像のほうが凄さがよく分かる

 ある日、「(リオネル・)メッシを見たことがあるか」と聞かれた。スタジアムで見たのは、たぶん5回ぐらいだと思う。日本代表戦とクラブワールドカップ、あとはバレンシア、カンプ・ノウでもたぶん見ているが回数は確かではない。

「やっぱり凄かった?」

 うん、凄かった。ただ、メッシはナマより映像のほうが凄いと思う。さらに言うと、スローで見たほうが、実際の凄さがよく分かる選手だ。

 逆に、シャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタはナマのほうが上手く見える。パスが特長の選手は、俯瞰的に見たほうが分かりやすい。メッシのように局地戦の名手だと、スタンドからでは何をやっているのかよく分からないのだ。だいたいプレーも速すぎる。

 30年ほど前、「(ミシェル・)プラティニは全然絵にならない」とカメラマンが言っていた。当時のスーパースターが「絵にならない」は不思議だったが、その理由は「ボールと一緒にファインダーに入ってくる機会が極端に少ない」という職業的な理由である。球離れが早く、ボールと一緒に撮れてもあんまりカッコイイ写真にならない。その点、ディエゴ・マラドーナはドリブルしてくれるし、アクションも派手なので撮り甲斐があるという話だった。カメラマン的には、パサーよりドリブラーのほうが良い選手なのだ。

 スタンドから見たドリブラーとしては、メッシよりもロナウドのほうが興奮を覚えた。ブラジルの“フェノメノ”のほうのロナウドだ。

 疾走感が凄かった。ロッテルダムのカップウィナーズカップ決勝では、湖面を切り裂いて疾走するモーターボートみたいだった。デ・カイプはヨーロッパのスタジアムとしては傾斜がなだらかで、ロナウドが走り出すと前方の席の客が立ち上がり、それが後方の席へ波及していく。人波の連鎖は記者席まで押し寄せてきた。立たないと見えなくなるのでどうしてもそうなる。記者席の後方の人々もたぶん立ち上がっていたはずだ。

 密集に突っ込むメッシと違い、ロナウドはハーフウェーラインから広いスペースを突っ走る。体も大きいので迫力もあった。バルセロナ時代はロナウドのキャリアでも全盛期で、インテルで大怪我をした後は疾走距離も半分以下になり、迫力もそれなりになってしまったのは残念だが、エンターテインメントとしてはナマで見たなかではトップクラスだ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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