歴代スーパースターと“娯楽性” メッシ以上に興奮…“怪物”ロナウド、バルサ時代の疾走感

“皇帝”ベッケンバウアーはまったく空気を読まなかった

 ロナウドと双璧なのはロナウジーニョ。この人は生粋のエンターテイナー、曲芸的なプレーの数々で観客を喜ばせた。体格はロナウド並に大きいので、近くで見るとけっこう迫力もあった。

 ペレを見たのは、もうとっくにピークを過ぎた引退間近のNYコスモスでの興行試合だったが、なぜ彼が王様なのか少し分かった気がしたものだ。試合がダレてくると、いきなり強烈なミドルシュートを打つなど、観客を飽きさせない。期待どおりのプレーをしてくれるのだ。

 ペレとは対照的だが、ある意味印象的だったのがフランツ・ベッケンバウアーである。やはりNYコスモスの試合、前半アディショナルタイムになってコスモスはボールを回して時間を消費しはじめた。すると、少しずつブーイングが出始めて、それがだんだん大きくなっていった。GKがバックパスを捕球できた時代なので、バックパスしてしまえば相当時間は稼げるのだが、さすがにコスモスの選手たちも躊躇していた。

 すると、ベッケンバウアーがボールを預かりに来てくれた。“皇帝”に預ければなんとかしてくれるだろうとボールを渡したように見えたのだが、ベッケンバウアーはダイレクトでGKへバックパス。おかげで大ブーイング。ただ、まったく空気を読まず、観客に媚びることもなく、ロングバックパスをやって平然としていたのは妙に感心したのを覚えている。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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