明確に変わりつつある“鹿島スタイル” 苦しい台所事情も…仄かに見え始めた「未来の姿」

苦しい台所事情も、鹿島に見えた兆しとは?【写真:小林 靖】
苦しい台所事情も、鹿島に見えた兆しとは?【写真:小林 靖】

【識者コラム】中2日で迎えたFC東京対鹿島の一戦、両者とも“ダメージ”は甚大だった

 中2日で水曜日開催のJ1は、逆に過密日程のリーグを占うシミュレーションとして興味深い材料を提供した。

 ともに今年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)代表だったFC東京、鹿島アントラーズだが、ダメージは予想以上に甚大だった。

 まずFC東京は、リーグ2位となった昨年の開幕時から考えれば、久保建英(ビジャレアル)、橋本拳人(ロストフ)、室屋成(ハノーファー)と3人の日本代表や、チャン・ヒョンス(アル・ヒラル)が移籍し、さらに今節は守備の要である森重真人や契約上の規定でレアンドロを欠くことになった。結局前節とはスタメンを6人入れ替えたうえに、切り札のディエゴ・オリヴェイラまでもベンチスタートだったから、これで拮抗した試合ができれば収穫だったかもしれない。

 ただし鹿島も、台所事情の困窮ぶりでは負けていなかった。前節のガンバ大阪戦で、右サイドバックとしてスタメン出場した広瀬陸斗が序盤に負傷退場。現役引退を表明していた内田篤人の出番が増えて、最後の試合を盛り上げる効果はあったが、逆にクラブとしては一番痛い時期に引退されてしまった。

 もっともACL本戦への出場権を逃し、開幕から4連敗をした頃は解任も時間の問題だと思われたザーゴ監督だが、その後は丁寧に土台を築き、軌道修正の兆しを見せている。明確にコンセプトを示し、躊躇せずに若い選手たちにチャンスを与えることで、次世代の未来図も仄見えるようになってきたから、再建期と割り切れば悪い内容ではない。

 ジュビロ磐田と覇を競った頃の鹿島は、むしろいくらパスを繋がれても焦れずに戦い抜く勝負強さや堅守を基盤としていた。だが現在の鹿島は、ショートパスを連ね、しっかりと主導権を握ろうとするスタイルへとシフトチェンジしている。その点でFC東京とは明確に対照を成した。

 ゴールキック一つを取り上げても、長身FW原大智を起用したこともあり、ロングボールを蹴り続けるFC東京に対し、鹿島はセンターバック2枚(犬飼智也、関川郁万)を両脇に配し、GK沖悠哉がどちらかに繋ぐことからスタート。反面、無理に最終ラインで繋ぐことに固執せず、セーフティーを意識しながらサイドを起点として速いパスワークでの崩しを繰り返し試みた。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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