不振の鹿島はどこへ向かう? ビルドアップとハイプレスに挑戦も…見えない“完成予想図”
【識者コラム】“変革期”のザーゴ新体制、従来の原則や選手の質から離れすぎている?
鹿島アントラーズの不振は今季の異変だろう。
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最下位こそ脱したが、J1リーグ8試合を終えた時点で2勝1分5敗の12位。ルヴァンカップに敗退した後、「ハートの問題」というジーコの発言が報道されていた。それは的を射ているのかもしれないが、不振のチームに精神論が出てくるのはあまり良い兆候ではない。
これは取材者の間での「あるある」的な定説なのだが、「バーベキュー・パーティーをやると危ない」というのがある。選手、スタッフがバーベキューで結束を図るのは、上手くいっていないチームがよくやることなのだが、それで効果があったためしがないという話である。
鹿島はザーゴ新監督の下、変革期にあるようだ。
鹿島の伝統を人から人へ伝承していく手法が、中心選手の海外への移籍によって維持するのが難しくなっていた。プレースタイルを明確化して、選手の入れ替わりに対応できるようにという意図があるとも言われている。
ただ、ザーゴ監督になってからの変化といっても、そんなに大きな変化ではないと思っている。
主な変更ポイントは自陣からのビルドアップと敵陣でのハイプレスだが、この2つは程度の差こそあれ、どのチームでも取り組んでいる事柄なのだ。しかし、鹿島のような落ち込み方はしていない。鹿島の従来の原則や選手の質から離れすぎていて、言い方は悪いが罰ゲーム化しているのかもしれない。
ビルドアップとハイプレスは、ポゼッション型のチームにとっての両輪だ。パスがつながるので押し込める、押し込めるので敵陣からプレスするほうが理にかなっている。両輪が上手くリンクすれば、強みを生かしたプレーができる。昨季の横浜F・マリノス、今季の川崎フロンターレはまさにそうなのだが、鹿島はポゼッションに強みのあるチームではない。
オーソドックスな4-4-2、ミドルプレスとカウンターアタックを基調としながら、ポゼッションもある程度できる。何かに特化しない、いわば普段着のサッカーが鹿島の強みで、それでクラブワールドカップにおいてレアル・マドリードとも渡り合っていた。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。