元浦和ワシントンが語る日本での「思い出3選」 “最高のサポーター”と喜んだあの瞬間

心臓を叩くゴールパフォーマンスに込められたサポーターへの思い

 ブラジルに帰ってきたことを実感する瞬間を聞くと、彼はこう言ったものだ。

「チームが負けて、サポーターが罵倒してくる時かな(笑)。みんな、常にすべてを求めるから。全部勝ちたいし、すべてのプレーが上手くいってほしい。それはクラブへの愛情、サッカーへの情熱から来るものなんだけど、日本のサポーターは少し違う。同じように情熱を持ちながら、難しい時もあることを理解し、そのなかでいかに闘志を燃やして戦ったかを見てくれる。そして、次に良くなるために、その闘志を称え、待ってくれる。そんな日本の人たちの文化、生き方、考え方を、心から尊敬していた。人を愛する心、信じる心を、日本の人たちから学んだんだ」

 ワシントンはフェルネルバフチェ(トルコ)でプレーしていた2002年、心臓病を患った経験がある。選手生命の終わりだと思われた大病を乗り越え、2004年にブラジルのアトレチコ・パラナエンセで再びピッチに立ち、同年のブラジル全国選手権で34ゴールを挙げて得点王に輝いた。そして、ゴールを決めるたびに、心臓を叩いて歓喜を表した。

「日本のサポーターも、僕を戦士とみなしてくれた。そう、『サムライ』(笑)。その言葉がすごく好きだった。ゴールを決めて、心臓を叩くたびに、人生とは何かを感じていたんだ。あのパフォーマンスは、また一つ達成できた、もう一度サポーターに喜びをもたらすことができた、その喜びを象徴するものだった」

 2017年7月、ワシントンは元日本代表MF鈴木啓太の引退記念試合に参加した。その思い出とともに、もう一度メッセージを送ってくれた。

「あの日は本当に感動的だった。かつて一緒にプレーした仲間たちやサポーターと再会できたし、サポーターの笑顔を見るために一丸となって戦った、あの頃の雰囲気のなかに、再び身を浸すことができたんだ。浦和サポーターは僕の心の中に住み続ける。いつでも浦和を応援しているし、また会える日が来ることを願っている。ガンバッテ! アリガトウゴザイマシタ」

藤原清美

ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。

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