「新型コロナ後のサッカー界」を大胆“仮想” 国際試合の風景を変える“ウイルス再流行”の脅威

大規模な隔離施設が誕生、サッカーの新たな開催地に?

 通常の隔離用ホテルより割高にはなるが、温浴施設やビジネスセンターが完備され、特に魅力的だったのがスポーツエリアである。国際試合で遠征するアスリートやチームも2週間隔離されるので、その期間中のトレーニング施設が必要だった。2週間、何もしないまま入国して試合をすれば著しく不利になるのは目に見えている。かといって、4週間前に入国するのは経費もかかるうえスケジュール調整も困難だった。

 そのためサッカーの国際試合は当初セントラル方式が中心に行われていたのだが、ハブ・センターが各地にできたことでホーム&アウェー方式が復活。ハブ・センターにスポーツエリアが付設されたので、入国したスポーツ関係者のほとんどがハブ・センターを利用するようになった。

 ハブ・センターの利用者は練習を見ることも可能で、チーム側が非公開を希望した場合でも練習試合を観戦することはできた。チケットも宿泊代金に含まれている。やがてアウェーチームは正式に入国することなく、ハブ・センターにあるスタジアムで公式戦を行うようになった。それほど大きなスタジアムではなく観客も限られているが、これならば2週間以内にすべてのスケジュールを消化して帰国できる。ホーム側の了承が得られれば、2週間隔離されたうえに入国するという手間が省けるのだ。

 その後UAEが大規模なハブ・センターを建設し、ヨーロッパのビッグクラブを集めてミニ・トーナメントを開催して人気を集めるようになった。世界中からミニ・トーナメントを観戦するためにアブダビのハブ・センターに旅行客が押し寄せ、6万人収容のスタジアムが埋まっている。大半のファンはハブ・センターに宿泊するだけで帰国。フットボールの新たな開催地として脚光を浴びるようになっていく。

※このストーリーはフィクションです。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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