ブンデス1部昇格へ、遠藤航の本音 シュツットガルトが上位対決で露呈した脆さ
【ドイツ発コラム】首位ビーレフェルトとの一戦、相手のシステム変更から流れが変わる
サッカーでは監督の采配が試合の行方を決めることがある。特に選手交代はメッセージだ。そこからどのように戦い、どのような結果を狙うのか。チーム内でイメージをしっかりと共有できれば、落ち着いた試合運びをすることができるが、上手く伝わらないと意思の疎通が乱れて、相手に押し込まれてしまう。
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日本代表MF遠藤航が所属するドイツ2部シュツットガルトが首位ビーレフェルトを迎えた第25節の一戦では、そのあたりで監督の思惑と選手の解釈で少しずれが生じてしまったようだ。上位対決にふさわしく、両チームとも戦術秩序がしっかりと取られた戦いのなかで、ホームのシュツットガルトは徐々にリズムをつかんでいくと後半8分、元ドイツ代表FWマリオ・ゴメスのヘディングシュートで先制に成功する。
待望の先制点からしばらくは主導権を握り、2点目を狙えるチャンスも連続で作り出していた。ところが後半20分、ビーレフェルトが選手交代からシステムを4-4-2に変更すると、少しずつ流れが変わってくる。
同点を狙い、前から精力的にプレスをかけ始めてきたビーレフェルトに対して、シュツットガルトは中盤でのパスミスが目立つようになってくる。ペレグリーノ・マタラッツォ監督はFWゴメスを下げて、DFアタカン・カラソルを投入。3バックへの変更を決断した。
この交代策をピッチ上の選手は、「守備を固めて逃げ切る」というメッセージと受け取ったようだ。試合の流れ、残り時間を考えるとそうした判断も理解できる。ただ、一気に攻撃的にギアを入れてきた相手とのパワーバランスを落ち着けるためには、消極的なプレーにつながることが一番良くない。人数をかけさえすれば大丈夫というわけではなく、各選手の役割を確認し、すぐにアクティブに動かなければならないわけだが、押し込まれていた時間帯に守備固めという展開はメンタル的に気持ちを後ろに下げてしまうことがある。
3バック変更から3分後、相手のロングスローから守備が乱れ、途中出場のMFセビオ・ソウコウに同点ゴールを許してしまった。失点シーンだけを見れば、セットプレーから隙をつかれたもの。またソウコウがシュートの前に、シュツットガルトのDFパスカル・シュテンツェルの顔に肘打ちしていたようにも見える。スヴェン・ミスリンタットSD(スポーツディレクター)は、「間違いなくファウルだ。今シーズン何度目だ。我々が判定で不利になったのは」と、試合後のミックスゾーンで怒りが収まらない様子で主審の判定を批判していた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。