プレミアリーグの戦いを見誤ったファン・ハール監督 戦略家ゆえの誤算と開幕戦で香川が起用されなかった理由

マンUには「ろくなディフェンダーがいない」

 オランダの伝説的MFは、「ファン・ハールがオランダ代表で3バックを採用したのは分かる。我々にはろくなディフェンダーがいなかったからだ。しかし、アヤックス、バルセローナ、バイエルン・ミュンヘンでは、いずれも4-3-3を採用し、攻撃的なサッカーを展開してきた彼が、なぜマンチェスター・Uで3バックを採用したのだろうか!?」と語った。

 つまり、ファン・ハールはマンチェスター・Uには「ろくなディフェンダーがいない」と判断したのではないだろうか。

 2006年1月にネマニャ・ビディッチが加入して以来、9シーズンに渡り、マンチェスター・Uにはリオ・ファーディナンドとの不動のセンターバック・コンビが存在した。

 この2人に加え、ビディッチと同時にユナイテッド入りしたフランス代表の左SBエブラも昨季限りでマンチェスター・Uを離れてユベントスへ移籍。この3人が同時にいなくなり、マンチェスター・Uの守備陣に関していえば、明らかに一時代が終ったといえる。

 しかも、3人のレギュラーが同時に去って、今のところDFの補強で確定しているのはルーク・ショーだけ。この原稿を書いている20日、あわててアルゼンチン代表の左SBロホを獲得したが、これはショーが故障し、開幕戦の左サイドを預けたヤングがさっぱりだったことでの“緊急補強”だったという印象だ。

 長年最終ラインを守って来た不動のレギュラー3人がクラブを去り、新加入のショーも使えず、守備に不安があったからこその3バック採用だった。

 しかし=ここが相手戦力を見誤ったという部分になるが=3バックのシステムで、攻守の鍵となる両サイドにMFを起用した。

 しかもそのうちのひとりはこの試合がプレミア・デビューとなった21歳ジェシー・リンガード。まあ、経験不足の若手を起用したということはさておいても、守備を重視する3バックを採用しておきながら、両サイドに攻撃的な選手を起用したのはどういうことか。その理由は、開幕戦の相手がスウォンジーという、プレミアでは中堅以下に属するチームだったからだろう。

 結果的には、ファン・ハール監督も試合後認めたように、3バックで前がかりになって最終ラインの裏に大きなスペースを作り、そのスペースを相手につかれて2ゴールを許した。

 つまり、しっかり守って失点を防ぐ3バックを採用しながら、格下チームとの対戦ということで、攻撃に色気を残したウィンガータイプのMF2人を両サイドで起用し、その結果守備に空白が生まれて2-1で負けたということだ。

 こうした誤算が生まれた原因については、リンガードと、3バックの左サイドで先発し、これまたこの試合がプレミア・デビューだった20歳のテイラー・ブランケット2人の若手起用について聞かれたファン・ハールの答えから推測できる。

 ここでファン・ハールは「(2人の若手を使ったことが勝敗を分ける)違いになったわけではない。アメリカでは結果を出していた」と発言。つまり、LAギャラクシー戦7-0大勝ではじまり、インテルとの0-0以外は全勝したプレシーズンの成果をそのまま鵜呑みにしていたことを、図らずもほのめかした。

 確かにローマに3-2、レアルに3-1、リバプールにも3-1で勝利。直前のバレンシア戦も、苦しみながら2-1勝利。この対戦相手で6戦5勝1分は素晴らしい結果で、いい形で新シーズンに臨む形になった。

 しかし所詮プレシーズンはプレシーズン。相手が鬼気迫る勢いで迫り来るプレミア本番で、その”いい形”は、ファン・ハール監督本人も認めたようにもろくも崩れた。

 

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