プレミアリーグの戦いを見誤ったファン・ハール監督 戦略家ゆえの誤算と開幕戦で香川が起用されなかった理由

 開幕戦結果を受けての、英大手ブックメーカー『ラッドブロークス』の今季のプレミア優勝オッズだが、見事なほど各チームの戦力を反映した倍率だ。本当に良くできていると思う。

 筆者の感想もこの倍率と全く同じだ。初戦の印象では、今季の優勝争いはチェルシー、マンチェスター・Cの2強争いになりそうな気配である。

 弱冠チェルシーの方が人気になっているが、それは開幕戦で補強がうまくいったという印象が強かったからだろう。

 ジエゴ・コスタがプレミア初戦から力強さを見せ、前半17分で初ゴールも決めた。さらにファブリガスは、バルセローナを経て、精密機械のようなタッチを身につけて帰ってきた。2点目のアシストを見ると、フランク・ランパードの穴を埋めてあまりある存在である。

 それにつけても、スペイン代表MFをアーセナルで輝いたボランチに戻したモウリーニョ監督の判断は素晴らしかったと思う。やはりセスクはあの位置でプレーすることで、彼のサッカーセンス、視野の広さ、運動量の豊富さが最大限に活かされる。開幕戦を見た限りではあるが、すでにイングランド随一の司令塔だ。

 さらに10年続いた正GKツェフを押しのけたクルトゥワだが、1点を奪われはしたが、後半には大器を感じさせるスーパーセーブも見せ、初戦を無難にまとめて勝利に貢献した。

 こうした新加入選手の活躍に加え、今季3シーズン目になる、ランパードの8番をつけたオスカルと10番をつけたアザールには中心選手の風格が漂いはじめ、2点目を奪った2年目のシュールレも、この試合でさらなる本格化の予兆を見せ、第2次モウリーニョ・チェルシーの2シーズン目の船出は万全だった。

 一方のマンチェスター・Cだが、こちらの開幕戦勝利も隙がない勝ち方で、2連覇に向け盤石のスタートを切ったといっていいだろう。

 ジエゴ・コスタ、ファブリガス、クルトゥワと、話題の新加入選手が3人とも存在感を示したチェルシーとの比較では、マンチェスター・Cの開幕戦先発メンバーで今季加入選手はフェルナンド・レゲスただひとりとなり、補強のインパクトは小さい。しかしブラジル人MFが中盤の底で見せたボール際の強さ、タックルの上手さは際立ち、マンチェスター・Cの中盤に欠けていた“ボールを奪い返す能力”を付加し、見事なプレーを披露した。

 個人的にも、プレミアでこの位置の選手としては、マケレレ、マスチェラーノ以来のインパクトで、レゲスのデビュー戦は本当に素晴らしかった。

 また、チェルシーがファブリガスの加入で創造性を高めた印象に対して、マンチェスター・Cはそのフィジカルの強さをあらためて誇示したと思う。

 ともかくサブ3人を含め、この試合に出場した全14選手が強く、速い。その中でもヤヤ・トゥーレ、コンパニー、そして右SBコラロフの強靭さは怪物レベル。プレミアでは、クオリティの高い強豪が下位に勝ち点を取りこぼす原因のひとつに“フィジカルな肉弾戦”があるが、昨季王者にその死角はない。

 点取り陣も、ネグレド、ジェコ、アグエロの3人に、昨季は故障に泣いたモンテネグロ代表FWヨベティッチが加わり、さらにチーム内競争が激化。ナスリ、シルバのスピード、テクニックも健在で、昨季以上のゴール量産も期待できる状態だ。

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