“無名”FW食野、スコットランドで驚きの“王様”デビュー 知日家コーチ「年間15点」を確信

“特別待遇の起用”も不安なし 「ガチャガチャ騒がれたほうが嬉しい」

 試合はその後、両チームが1点ずつを奪い合い、中盤で相手の攻撃のチャンスを潰し合うフィジカルな展開となって膠着した。

 食野は後半35分に元エバートンのスコットランド代表FWスティーブン・ネイスミスの投入で右サイドにポジションを移すが、すかさずカウンターの起点になる見事なターンで、疲れを感じさせないプレーを見せる。また同42分には右サイドで鋭い縦パスを放ち、攻撃の起点としても類稀なセンスを見せた。

 2-2のドローに終わった試合後、悔しさを滲ませて報道陣の前に現れた食野だったが、「特別待遇の起用、救世主として期待されているが重圧は感じるか?」と聞くと、「まあ、でもそういうのがあったほうが僕はありがたいんで。何も期待されないでほっとかれるよりは、そうやってガチャガチャ騒がれたほうが嬉しい。関西人なんで騒がれたいし(笑)。昨日、空港に着いた時(報道陣やファンの出迎えがあった)の対応とか、すごい気持ち良かったし。期待されてるなっていうのが。まあ、もちろんその分頑張らなくちゃいけないんですけど」と、パッと明るい表情になって語ってくれた。

 前日の囲み取材でも「サッカーが大好き」と話していたが、その明るい笑顔には大好きなサッカーを本場の欧州でやる喜びに溢れていた。

 食野の取材を終えてスタジアムを去る際、レセプションでマクフィー助監督とばったり顔を合わせた。「今日はゴールは生まれなかったが、あのプレーぶりなら時間の問題だね」と声をかけると、「そのとおり」と力強い返事が返ってきた。

 しかも「あのくらいはできると予想していた」と話し、「幸いこれで代表ウィークに入る。みっちり練習して、リョウもチームを理解し、チームメートももっとリョウを理解するだろう」と続け、最後に「今シーズンが終わってみたら、リョウが欧州の日本人得点王になってるぞ」とすごい一言を放った。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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