神戸新コーチのモラス雅輝と“大物監督” 欧州で幅広いネットワークを築けた理由とは?

モラス氏は、オーストリアサッカー界を中心に素晴らしいネットワークを築き上げた【写真:中野吉之伴】
モラス氏は、オーストリアサッカー界を中心に素晴らしいネットワークを築き上げた【写真:中野吉之伴】

モラスが注目したLASKリンツの躍進

 ネットワークとは、ただのつながりのことではない。コンタクトを取り、様々な情報を交換し、様々なクラブの動きに目を向けることで、多様で豊かな考えを持つことができる。だから各クラブの事情に誰よりも詳しい。

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 日本だと欧州サッカーから学ぶというと、どうしてもバルセロナ、レアル・マドリード、リバプール、マンチェスター・シティ、バイエルンといった強豪クラブにばかり目が行きがちだ。だが、経営規模や目標設定があまりにも違う、世界でもトップ中のトップクラブばかりを見るのではなく、自分たちと似たような経営母体を持ちながら、優れた仕事をしている中堅クラブにもっと注目すべきではないだろうか。

 例えば前述のLASKリンツはどうだろう。有名選手はいない。オーストリアリーグはお世辞にも、世界トップレベルのリーグではないかもしれない。本来オーストリア国内だと4、5番手レベルのクラブだという。今季は2位と、日本代表MF南野拓実を擁するレッドブル・ザルツブルクに次ぐ成績で終えることができたが、それはオーストリア・ウィーン、ラピド・ウィーン、シュトゥルム・グラーツという強豪クラブが軒並み内部に問題を抱えて苦しみ、不調に陥ってしまったことが理由の一つに挙げられている。

 だが、モラスはそれだけが理由ではないと指摘する。

「リンツは経営的に凄く安定していて、意外と今予算があって、地元の州の企業が結構お金を出しているみたいです。あと2年ほどで新しいスタジアムが完成予定なのですが、そうなったら一気に規模も大きくなると思う。あとオーストリアとかドイツで結構強いエージェント会社がバックについています。だから選手の7、8割はそのエージェントの選手で、普通だったら入ってこれないような選手を獲れたりできたんです」

 補強では、チームが必要な選手しか獲らない。クラブとして攻守の切り替えが早いサッカーを志向しているからこそ、それに対応できる選手を獲得していく。ビジョンを持った監督の下で、しっかりとしたコンセプトで堅実に作り上げられたチームは高く評価されていく。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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