神戸新コーチのモラス雅輝と“大物監督” 欧州で幅広いネットワークを築けた理由とは?
大物たちとコンタクトを取るうえでの、オーストリアならではの利点
ヴィッセル神戸のアシスタントコーチに就任したモラス雅輝は、オーストリアサッカー界を中心に、他の人が簡単に手にできないような素晴らしいネットワークを築き上げてきている。5月下旬、インスブルックのカフェでいろいろな話をしていた最中に、ふとした話の流れから何気なくiPhoneを取り出して連絡先を見せてくれたのだが、そこにある名前を見て僕は驚いた。
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アディ・ヒュッター(フランクフルト監督)
ペーター・シュテーガー(元ケルン、ドルトムント監督)
トルステン・フィンク(ヴィッセル神戸監督)
フォルカー・フィンケ(元フライブルク、浦和レッズ監督)
カルステン・ヤンカー(元バイエルンFW)
ハンシィ・フリック(元ドイツ代表アシスタントコーチ)
ブンデスリーガ監督にドイツ代表アシスタントコーチと、凄い名前ばかりだ。「僕がしつこいだけですよ」と屈託なく笑いながら、モラスはネットワークを築くという点においてオーストリアならではのメリットを説明し出した。
「思うのはオーストリアとかスイスくらいの、面積・人口からすると小さな国にいると、上の立場の人ともネットワークを築きやすいなあと。オーストリアリーグ機構もそうですし、サッカー協会、ブンデスリーガのクラブもほぼ全部つながっているんですよ。あとクラブ(ヴァッカーインスブルック)の会長が、リーグ機構の会長でもあるんです」
確かにドイツでは、“上の立場の人”とはなかなか簡単にコンタクトを取ることもできない。新手の市場を狙う代理人やベンチャー企業がチャンスをつかもうと、あの手この手でアピールしてくる。自然と警戒心も高まり、よほどの関係性やバックボーンがないとアポイントを取ること自体が困難だ。
その点モラスは、電話一本でスイスやドイツの女子ブンデスリーガ監督に直接電話をかけて、テストマッチをオーガナイズすることができる立場にいるし、そのためのネットワークを築き上げてきた。今夏には今季オーストリアブンデスリーガ2位と躍進を遂げたLASKリンツ監督オリバー・グラスナーの下で、研修を受ける予定もあったそうだ。グラスナーがドイツのヴォルフスブルク監督に就任したことで、この話自体は流れてしまったが、「そういう人とも普通につながる」ネットワークがあることは凄い強みだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。