バイエルン最強コンビが刻んだ美しき時代 7連覇の歓喜と涙に彩られた「夢のような終幕」

ヘーネス会長の涙にユーモア溢れる返答 「もう1年契約をくれよ!」

「スペシャルな瞬間だったよ。バイエルンで、そしてブンデスリーガでの最後のタイトルだ。アリアンツ・アレーナでの最後の瞬間。この12年間、ファンが僕のためにしてくれたことを忘れたりはしないよ。『ダンケシェーン(ありがとう)』としか言えない。いつも助けてくれた。なぜ、ここでここまでやり遂げることができたのか、タイトルを勝ち取ることができたのか。ファンのおかげだ。そしてバイエルンのたくさんのスタッフのおかげだよ。いつもリスペクトを持って付き合ってきた。ここから離れるのは悲しいよ。

 僕がここに来た時、本のページは開かれたんだ。そして今、その本が閉じようとしている。でも、その中に書かれているものはこれからもずっと僕の中に残っている。ミュンヘンに来たというのは、良い決断だったね。そこから数年でいくつものタイトルを獲得できたよ。13年のことは絶対に忘れたりはしない(リーグ、カップ、CLの三冠を達成)。素晴らしいことだった。でも、バイエルンでのすべてのことが素晴らしかったよ」

 そう静かに神妙に振り返っていたリベリーに、1人のドイツ人記者が「あなたがゴールを決めた後、会長のウリ・ヘーネスが感極まって泣いていましたよ」と伝えた。ヘーネスはリベリーにとって「2人目のパパ」だ。脱税の罪で刑務所に入っていた時にも訪問している。心からの信頼と愛情を持っているのだ。

 そんなヘーネスが、自分のゴールで泣いてくれた。

「泣いたの?」

 そうリベリーは聞き返した後に、こう切り返した。

「だったら、もう1年契約をくれよ!(笑)」

 これには報道陣もみんな笑った。どんな時でもユーモアを忘れない、人生を楽しむスタイルがリベリーのリベリーたる所以だ。「ウリ(ヘーネス)の幸せそうな顔を見るのがうれしいよ。それだけのことをバイエルンのためにやってきてくれたんだから」と笑顔で付け加えた後、最後に「チャオ!」と元気に挨拶をして、去っていった。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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