マンC×リバプール、史上最高の「新2強時代」へ 2人の名将に見た“強さの根源”とは?

インタビュー等では、非常に温和な顔を見せるグアルディオラ監督【写真:Getty Images】
インタビュー等では、非常に温和な顔を見せるグアルディオラ監督【写真:Getty Images】

温和な表情の陰に隠れたペップの苛烈さと、クロップが放つ人間的な魅力

 そして印象に残っているのが、地元記者から「今日のパフォーマンスにはかなり固さが目立ったが?」と質問が飛んだ直後の対応。ペップは突如として目を見開き、鬼の形相になると「とんでもない! 今日のパフォーマンスこそ最高だった。申し訳ないがもう一度繰り返す、ベストパフォーマンスだ!」と言い放った。

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 この時、普段のインタビュー等では“物静かな哲学者”とでもいった非常に温和な顔をしたペップの陰に隠れている、尋常ではない激しさに触れた思いがした。

 優勝のプレッシャーがかかった試合を1-0で勝ち切る難しさ。精神的にギリギリのところで1点差を守り抜く強靭さ。そうしたシティの計り知れない強さの根源には、このペップの苛烈さがあるのではないだろうか。研ぎ澄まされ、勝利への1点に注がれる精神力。この激しくて鋭い思いが選手に乗り移るのだ。

 一方、翌5月7日のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝で、バルセロナを相手に歴史的な大逆転勝利を達成したクロップを見た。こちらはペップと打って変わって穏やかで、爽やかな印象だった。

 長身のドイツ人は、何か素晴らしいことを全力で成し遂げた男の達成感と満足感を漂わせ、疲れ切っていることも隠さず、等身大の姿で試合後の会見場に現れた。

 90分間ずっとピッチ上で叫んでいたせいでもう声も出ないのか、奇跡を起こした試合についてボソボソと小声で話していた。しかし、時折ジョークを交え、報道陣を笑わせた。疲れていて小声でも、その存在感は陽気な自然体そのものだった。そしていつまでも一緒にいたくなるような、人間的魅力に溢れていた。

 確かにこうした両者の個性に触れると、わずか10年ほどの監督歴で26ものメジャートロフィーを勝ち取ったペップのすごさと、優勝トロフィーの数では全く及ばず、あと一歩のところで栄光を逃すことも多いが、ドルトムント、そしてリバプールで絶大なる支持を集めるクロップの人間力が際立った。

 それに加えて両者は、スペイン的なテクニカル・フットボールをとことん極めたポゼッションサッカーと、ゲルマンの不撓不屈の精神性と運動能力を集約したプレスサッカーで一世を風靡する、現在のサッカー界で最もクリエイティブな指導者であると同時に、最もファッショナブルな監督である。

 すなわち、この2人の戦いは現在のサッカー界で文字通り世界最高峰だ。そして、その戦いの火蓋はまだ切られたばかりなのである。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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