好調の“J1昇格組”大分に根付く片野坂イズム 「これしかない」と策士が追求する機能美

チームを率いる片野坂監督【写真:Noriko NAGANO】
チームを率いる片野坂監督【写真:Noriko NAGANO】

「90分間、自分たちのサッカーをして主導権を握りたい。僕の理想は3-0で勝つこと」

 片野坂監督は「サッカーは判断のスポーツであり、頭を使うスポーツ。僕が考える今のサッカーは、味方の状況、相手の変化を見たなかで、いいポジションを取るための判断をしなければ通用しない」と徹底した反復練習により、①攻守の素早い切り替え、②実戦以上のハイプレッシャーへの対応、③フリックなどを活用したパスワーク――などを、体に意図的にすり込ませた。

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 実際に「練習でやっていることが試合に出た」(MF小塚和季)というのが、今季リーグ開幕戦の鹿島アントラーズ戦(2-1)だった。攻守が切り替わった直後にMF前田凌佑の縦パスから、FW伊藤涼太郎→小塚→FW藤本憲明とつないでゴールが生まれている。

 大分の攻撃は、ほとんどが地上戦だ。ロングボールは主にスペースへと供給されるだけで、多くのパスは足もとを経由する。ワンタッチで捌く藤本のボールをキープする時間は極端に短い。そして、絶妙な距離感を保ったシャドーの2人が藤本からボールを受け、前向きで攻撃を作る。その結果、昨季のJ2で藤本、FW馬場賢治、FW後藤優介、FW三平和司の4人が二桁得点を記録し、彼らのコンビネーションを中心として大分のサッカーは花開いたのだった。

 今季はゴールへの道のりが遠回りとなるが、サイドを起点に試合を組み立てている。サイドアタックを機能させるために、前線の3人はスペースメイキングする。第4節の横浜F・マリノス戦の2得点はサイドから生まれたが、この得点が高く評価されたのは単独ではなく複数の連動性によって生み出されたものであったからだ。

 今後は相手の研究が進み、苦戦は免れないだろう。「まだ我々は何も成し遂げていない」と語る片野坂監督は、研究されたなかでもチーム全体で意思統一をして相手を崩す術を考えている。その根底には強い信念がある。

「サッカーには正解がない。だからこそ勝つだけではなく、自分たちの戦い方をして勝ち点3を取ることを追求したい。90分間、自分たちのサッカーをして主導権を握りたい。僕の理想は3-0で勝つこと」

 片野坂イズムの下、大分は理想のサッカーを追い続ける。

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柚野真也

1974年生まれ、大分市出身。プロ、アマ問わず、あらゆるスポーツを幅広く取材。現在は『オーエス大分スポーツ(https://os-oita.com)』で編集長を務める傍ら、新聞や雑誌、ウェブなど各媒体で執筆する。一般社団法人日本スポーツプレス所属。

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