「川崎へ行けば上手くなる」 “スカウトの眼力”が支えるJリーグ王者の黄金時代

「川崎へ行けば上手くなる」というブランドイメージを確立【写真:荒川祐史&Noriko NAGANO】
「川崎へ行けば上手くなる」というブランドイメージを確立【写真:荒川祐史&Noriko NAGANO】

川崎に根付く大卒を化けさせる伝統と適材適所の補強

 久保建英の変貌に話題が集まったJ1リーグ開幕戦の“多摩川クラシコ”だったが、王者・川崎フロンターレでは改めて強化(スカウト)の充実ぶりが目についた。

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 スコアレスで推移した試合で最初に動いたのは、川崎の鬼木達監督。後半10分に右サイドバックのマギーニョを下げると、馬渡和彰を送り込んだ。新加入選手同士の交代で、同監督も「昨年まではエウシーニョという絶対的な存在がいたが、今年は競争になりキーになるポジション」と語っている。

 馬渡は昨年サンフレッチェ広島に移籍し、初めてJ1を経験したが、リーグ戦の出場は4試合に止まった。だが3連覇を狙う川崎は、助っ人外国人とのレギュラー争いを期待して獲得してきた。実際、16日に行われた富士ゼロックス・スーパーカップに続きマギーニョとの交代出場だったが、馬渡がピッチに立つと明らかに効果的な崩しが増えた。マギーニョが開始早々に初対面の久保に翻弄され、まだ味方との呼吸が微妙に合わず順応に時間がかかりそうなことを考えると、これで序列が入れ替わった可能性もある。

 Jリーグ初参戦が1999年と後発の川崎には、もともと大卒を化けさせる伝統があった。無名に近かった中村憲剛はもちろん、東京都リーグ出身の鄭大世(現・清水エスパルス)も練習生として獲得し、これで彼の人生は一変した。現在も筑波大時代に風間八宏前監督(現・名古屋グランパス監督)の指導を受けた谷口彰悟や車屋紳太郎以外にも、小林悠は言うに及ばず、昨年ルーキーイヤーで日本代表に選ばれた守田英正や、愛知学院大出身の知念慶らを獲得し、着実に重要な戦力に引き上げている。

 一方でスペインや韓国でもキャリアを積んだ家長昭博は、ガンバ大阪と大宮アルディージャを経て、昨年見事に開花しJリーグMVPを獲得。G大阪から来た阿部浩之や北海道コンサドーレ札幌から移籍してきた奈良竜樹もしっかりとフィットした。逆に生え抜きで芽を出しかけた三好康児(札幌→横浜F・マリノス)や板倉滉(昨季ベガルタ仙台に在籍)は他のクラブに貸し出し、結局板倉は欧州へ進出している(1月にマンチェスター・シティへ完全移籍後、フローニンゲンにレンタル)。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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