Jリーガーとセカンドキャリア 徳島DF井筒陸也が発信する「サッカー選手の価値」とは?

サッカーを“一生辞めない”方法を探している

――井筒選手は大学時代の就職活動で自分と向き合い、思考が深まったと話していました。高卒でプロになる人も多い世界ですが、やはりどこかで立ち止まって自分と対話する時間は必要だと思われますか?

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「これに関して言えば、走りながらでも考えられると思いますよ。『走りながら考える』っていいフレーズだなと思って最近は勝手に使ってるんですけど、夢中になりながら考えを言語化したり、抽象化したりすることが本質的だと思いますね。僕のように大学へ行って立ち止まる時間が、必ず必要だということはないです。僕はむしろサッカー選手は高卒でなるのが一番いいと思っているくらいです。プロになって走りながら考えればいいと思います」

――あらためてですが、サッカー選手のセカンドキャリアについてはどのように考えていますか?

「10年以上、人によってはもっとだと思いますが、それだけサッカーをやってきた人生と新たな社会に出ていった後の人生が、全く分断されてしまうなんて辛いじゃないですか。僕もサッカーしかやってこなかったし、今すぐ社会に出なくちゃいけないとなったら、同世代から3年も遅れています。次のステージに進むことも一つの自分の人生なので、もしもサッカー選手を辞めることになっても、ネガティブに捉えるのではなく、単なる転職というふうに考えられる準備をしたいです。

 誰だって、20年間やってきたサッカーを辞めるなんて一大決心するのは心苦しいですよ。悲しいです。できることなら一生辞めたくないですよ。だからこそ、現役生活に限りがあるなかで、サッカーを一生辞めない方法を開発しているという感じです。一生(関わることを)辞めないために、今後につながることを考えています。そうすればより頑張れますし、より突き詰めようとも思える。その感覚です」

――サッカー選手を辞めると、それまで当たり前にあった「Jリーガー」という肩書きが外れます。また部活動で残した実績も、社会に出ればそれ自体には大きな意味がありません。サッカー選手が何者でもなくなった時のために、準備をしているか、していないかは大きな差になりますよね。

「ほとんどの人がプロになれないし、日本代表にもなれない。『スラムダンク勝利学』を書いた辻秀一先生の言葉じゃないですけど、結果を出さなかったから意味がなかったという話になってしまうと、あまりにも残念です。何万人とチャレンジしても10人しか認められないということではなく、スポーツというのは絶対に普遍的な価値がある。そうなったら(プロに)なれていない人がどう幸せになるかのほうが、絶対に重要だと思うんですよ。

 ということは、そこに対して与えるソリューションのほうが社会的価値は高い。僕はそういうことを教えられる立場にいると思っているし、そういう役割に魅力を感じています。同業のサッカー選手、J2やJ3の選手はもちろん、プロになれなかった大学生やスポーツに携わってきた人たちに向けて何かを伝えていきたい。日本代表に選ばれるような選手たちに対して影響力は持っていないけど、彼らには彼らに見えている世界があるように、それぞれに価値のある世界がある。その人たちが僕らに与えてくれるものもある。役割ですね」

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