15歳から日の丸をつける澤が迎えた最後のW杯 誰もが追い掛けたその背中

もう一度、世界一に

 人一倍強い思いで試合に臨むなでしこがいる。3年ぶりに訪れた頂きから見える風景は、日本サッカー界をけん引してきた彼女にどう映るのだろうか。この場所に、たどり着けるかどうかすら分からなかった。だが、澤穂希は再び世界一を懸けた舞台に帰ってくる。
 なでしこジャパンは5日(日本時間6日)、いよいよ連覇の懸かった女子W杯決勝アメリカ戦に臨む。バンクーバーで行われるこの一戦は、2011年ドイツW杯、2012年ロンドン五輪と同カードとなる。
 
 なでしこが初優勝を飾った前回大会MVPにして得点王、今大会でも背番号「10」を背負う澤。実に6度目となる大 舞台に立つ日本サッカー界の生ける伝説だ。代表204試合出場83得点という偉大な記録を持つ彼女は、このカナダ大会が最後のW杯になることをFIFAのインタビューで明言している。国際大会3試合連続でアメリカとの決勝戦を控える。ドイツW杯では日本が、ロンドン五輪ではアメリカがタイトルの懸かったファイナルを制した。対戦成績は1勝6分け23敗と大きく負け越しているが、決勝では1勝1敗の五分。自身最後のW杯を飾るにふさわしい舞台が整った。
 対戦相手のアメリカにも、35歳のベテランFWアビー・ワンバックという経験豊富なストライカーがいる。アメリカ代表として248試合183得点という、澤をも上回る実績を持つ彼女も、今大会が最後のW杯となることを認めている。澤が2009年に移籍した米ワシントン・ フリーダム時代の同僚で、ロンドン五輪以降、2人は再戦の機会を待ちわびてきた。
 
 敵であると同時に、友として互いを認め合う存在の2人がカナダの地で再会する。共に今大会は絶対的なレギュラーというわけではない。それでも「私が欲しいのはW杯での勝利。ただそれだけ」と語るワンバックの言葉からは、この大会に懸ける並々ならぬ思いが見て取れる。出場すれば必ずや日本の脅威となるだろう。
 
 一方の澤も、長い代表のキャリアに一つの区切りをつけようとしている。彼女の代表での軌跡を語るには実に22年の時をさかのぼる必要がある。1993年にわずか15歳で代表デビューを果たすと、1995年のW杯スウェーデン大会で世界デビューを果たした。以後、4度の五輪と6度のW杯を経験するという 驚異的なキャリアを積み重ねた。

 

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