W杯は「自分たちのサッカー」の祭典 清々しいほど頑なな世界と揺れ動く日本

ポルトガル(左)は守備的なスタイルで2年前のEUROを制し、スウェーデンの手堅いサッカーは20年以上にわたり変わっていない【写真:Getty Images】
ポルトガル(左)は守備的なスタイルで2年前のEUROを制し、スウェーデンの手堅いサッカーは20年以上にわたり変わっていない【写真:Getty Images】

一目で分かるスウェーデンの整然としたスタイル

 ポルトガルは2年前の欧州選手権(EURO)で初優勝した。初のビッグタイトル獲得、悲願の優勝だった。大会中に守備的なスタイルに変化し、守り倒す形で優勝した。ところが、大会後は何事もなかったように元のスタイルに回帰している。

 やっと優勝できたのだから、「よし、これからはコレでいこう」となっても良さそうなものだが、全然そうなっていない。監督も代わっていないし選手もほとんど同じ。それなのに、まるで当然のことのように「戻るべき場所」へ戻った。本当は戻るべきでない場所かもしれないのに……。

 2016年のEURO優勝は“たまたま”であり、“成り行き”でああいうサッカーになっただけで、あんなものは全く信用していない。そういうことなのだろうか。“まぐれ”は二度と起こらないので、また地味に攻撃的な「自分たちのサッカー」に戻ります、ということなのか。

 スウェーデンの手堅いサッカーは、少なくともここ20年以上全く変わっていない。定規で引いたような4-4-2の律儀なライン、極めて規則的なゾーンディフェンス、実に整然としたプレーぶりだ。1994年アメリカW杯で3位になっているが、それ以後はそこそこ勝てるがそれ以上はいかないチーム力に留まっている。

 規則的なゾーンディフェンスは、それ故に弱点も規則的に存在する。例えば、DFとDFの間のスペースに敵が入ってきて、そこにクロスボールを合わされて失点したとしても、スウェーデンのサッカーにおいてそれはもう仕方のない失点なのだ。それよりもゾーンが優先で、いわば100%守れる守備はないので、70%確実に抑えるためなら30%は捨てて構わないという割り切りが感じられる。攻撃に意外性はあまりなく、長身FWを生かしたパワフルなプレーがほとんど。パワーが通用しなくなると点が取れない。だから、ある程度は勝てるがそれ以上にはならないのだが、スウェーデンは頑なにスタイルを変えない。変えられないのか、変える気がないのかよく分からないが、ずっとひと目でそれと分かるぐらい「自分たちのサッカー」だ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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