広島MF青山敏弘、3年ぶりの代表サプライズ選出 苦悩から這い上がった“再生”の舞台裏
【青山が描く“新ボランチ像”|前編】心身ともに傷ついたなかで、唯一の心の拠りどころだったキャプテンマーク
サンフレッチェ広島のMF青山敏弘にとってのこの2年間は、日本代表どころではなかった。
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「試合に使ってもらえるのが、不思議なくらい」
「チームに迷惑をかけた」
そんな言葉ばかりが口をつく。
2015年のJリーグMVPは、その栄誉にふさわしいプレーができず泥沼に沈み込んだ。かつてのように動かない身体――。思い通りに走れない自分自身に絶望し、できていたことすらできなくなっていた。2015年は3得点7アシスト。その数字以上に絶大な存在感を生み出して攻撃のタクトを振るっていたのに、2016年は1得点2アシスト、2017年は0得点2アシスト。この数字すら意外に感じるほど、彼は有効なプレーができていなかった。そういう状況の選手が、日本代表に対して欲を出せるはずもない。
昨季、広島は残留争いに巻き込まれた。勝ち点33での残留は幸運だったと言われても仕方がない。その責を一身に背負った男に対して周囲はこう囁いた。
「もうキャプテンは難しいのではないか」
「重責から解放させたい。キャプテン交代が必要」
2017年、自分自身の闘いすら、全く記憶から失っていた。肉体はボロボロ、メンタルも傷だらけになり、立ち上がることすら難しい。だからこそ、周りは慮って青山という偉大なサッカー選手を、チームではなく自らのプレーに専念させたいと考えた。
しかし、時に優しさは人を傷つけることがある。苦境に立った時、青山はキャプテンマークを心の拠りどころにしていた。「すがっていた」とのちに語るように、キャプテンの責任感だけでピッチに立っていた。そんな男から、キャプテンマークを取り上げてはならなかったと、今は思う。