ハリル解任で「チャンスが巡ってきた」 夢のW杯へ、武藤嘉紀が刻んだ“8得点”の価値

「ワールドカップ行きのチケットを逃すわけにはいかない」

 神経を研ぎ澄ませてゴールを目指す。それがドイツで生き抜くために得た彼の処世術であり、他とは異なる個性だ。彼自身もまた、それを知るからこそ、目前に迫ったサッカー界最高峰の大会に出場する夢を諦めていない。

「(日本代表の)監督が代わったのは、もちろんプラスなんじゃないですかね。前の監督からは呼ばれていなかったので。それこそ、チャンスが巡ってきたというか、そこでもう一回自分を必要としてもらえるように、アピ……ああ、もうアピールできないか(笑)」

 武藤にとって、W杯とはどんな舞台なのか。

「ワールドカップは幼い頃からの夢ですし、日本代表のユニフォームを着る喜びというのは、それを着た者にしか分からないものだとも思う。だから、それを着られなかった時期はもどかしかったですし、自分の力が及ばないというのは、とても悔しかった。だからこそ怪我をしても、それに向かって何がなんでも間に合わせて結果を出そうと、この最後のブンデスリーガの3連戦を戦いました。目の前にワールドカップ行きのチケットがあるのに、それを逃すわけにはいかない」

 残留を決めた後に行われた12日のブンデス最終節、今季最終戦となったホームでのブレーメン戦は1-2の敗戦。少し気が抜けたような自チームのパフォーマンスに厳しい眼差しを向けながらも、武藤は必ず続くはずの戦いへ向けて、もう一度自らの気を引き締めていた。

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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