W杯まで残り8カ月ですべきこと データで見るハリルJ「カメレオン戦術」の可能性

4年後に起きた強豪国の“スタイル転換”

▼DATA-2

 そうした世界の潮流を受ける形で、14年W杯に臨んだアルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表は、岡田体制下での“対アジア”と“対世界”で戦い方を変えるダブルスタンダードを改め、世界相手にも自らイニシアチブを握って戦うスペイン代表のようなパスサッカーを目指した。ザッケローニ監督と過ごした4年間は、日本人らしいアジリティーと規律、パスワークを中心とした「自分たちのサッカー」を追求する日々だった。

 ザックジャパンのW杯アジア最終予選における平均ポゼッション率は59%。予選突破後の13年11月に行われたベルギー、オランダとの連戦では、1勝1分という好成績を収めたことに加えて、ポゼッション率も52%と4年前と比較してアジアと世界の差が大きく縮まったかに見えた。

 そして[DATA-2]の通り、日本代表が目指したサッカーは14年W杯で確かに花開いた。高いポゼッション率とパス成功率を示す右上のエリアに、日本代表は列強国とともに顔を出すことになった。そのエリアには前回王者スペインをはじめドイツ、アルゼンチンの姿があったが、問題はそこからベスト16に進出したチームが「5チーム」に止まり、10年大会の「8チーム」から減少していたことだ。

 一方、ポゼッション率が低くパス成功率が低いことを示す左下のエリア、10年W杯で日本代表がいた場所からベスト16に進出したチームは、「4チーム」から「7チーム」に増加している。

 14年ブラジルW杯でのスペインのグループリーグ敗退、そして多くの強豪国の“スタイル転換”から学ぶべきことがある。W杯は、その時一番強いチームが優勝する大会だ。しかし、その時点で4年後の最強チームを決めるための戦いも始まっている、ということだ。

 10年W杯でスペインが披露した美しいパスサッカーを打ち負かすための準備は、その大会が終了したと同時に始まっていた。スペインを倒すために、彼ら以上に高いスキルを身につけるのか、それとも全く異なるスタイルで対抗するのか――。14年W杯のグループリーグを勝ち抜いた多くのチームが採用したのが、スペインを目指し、追い越すスタイルではなく、むしろ相手にボールを保持させ、奪ったボールを効率良く攻撃へとつなげるカウンタースタイルだった。そうした流れのなかで、世界一の栄冠を見事に手にしたドイツは、ポゼッションとカウンターを相手に合わせて柔軟に変化させる「ハイブリッド式」という、さらに未来を見据えたスタイルを披露し、南米開催のW杯において初めて欧州のチームが優勝するという偉業を成し遂げた。

 日本は14年W杯のグループリーグ敗退から何を学び、何を改善すべきと考え、18年W杯に向けて戦ってきたのか。ハリルホジッチ監督自身は先日の記者会見で、日本の「ポゼッション信仰」に警鐘を鳴らしていたが、改めてW杯アジア最終予選10試合のデータを基に、ハリルジャパンの強化プロセスを検証してみたい。

 

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