W杯まで残り8カ月ですべきこと データで見るハリルJ「カメレオン戦術」の可能性

ボール保持率は減少もシュート数で相手を圧倒

▼DATA-4

 前述したように、10年南アフリカW杯アジア最終予選の日本代表の平均ポゼッション率は57%、同じく14年ドイツW杯アジア最終予選では59%で、それぞれ全試合で日本代表のポゼッション率が相手を上回っていたが、[DATA-4]でまとめた通り今回の最終予選全体の平均は51.1%。つまりほぼ五分まで落ち、10試合中4試合は相手よりもポゼッション率が低かった。しかし、ボールを支配していなくても1試合の平均シュート数は相手の7本に対して2倍以上の15本、10試合の中でシュート数が相手を下回ったのは1試合だけだった(1試合は同数)。

 サッカーにおいて得点を奪うために必要なことは、なるべく相手ゴールに近い位置でプレーすることだ。その観点から、全体のパス数のうちペナルティーエリアへのパスが何%を占めているのかを見ると、日本代表の平均7.2%は、相手チームの4.9%から約1.5倍となっており、ペナルティーエリア内へのパス成功率も約9%高くなっている。

 過去のW杯予選と比較して低いポゼッション率、しかしシュート数は十分多く、相手に打たせる機会は少ない。相手ゴール前に近づくパスの比率は高く、その成功率も高い。ハリルジャパンが追求するスタイルが、少しずつ見えてきた。

 それでは、低いポゼッション率で多いシュート数というのは、どういうことなのだろうか。そこで1本のシュートを打つのに何本のパスを回したかを見ることで、「シュートの効率性」として算出した。

 1本のシュートを打つために日本が回したパスの平均は35本、相手チームは88本と日本の2.5倍の本数を要している。日本の方がシュートを打つまでに多くのパスを回した試合は、今年3月にホームで行われたタイ戦だけだった。

 さらにペナルティーエリア内で打たれたシュート1本に対し、そのエリアに送られるまで何本のパスを回したかを見ると、日本代表の4本に対し、相手チームの平均は8本と2倍となっていた。

 もちろん、データには様々な種類があるため、どのような目的で利用するかによって解釈はまちまちだろう。今回は歴代の代表に比べて低くなったポゼッション率の裏に、何か隠されていることはないかを探る視点でデータを分析した。そしてこれらのデータを見る限り、ハリルホジッチ監督の志向するスタイルには、ポゼッションやカウンターなど「ボールの運び方へのこだわり」はさほど感じられず、むしろ「効率性」を高めて、相手を「仕留めるための確率」を上げることに注力しているように感じられる。

 

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