“3度目の正直”で掴んだオファー「来ないか」 憧れの強豪で躍動…3年ぶりの選手権へ「貢献したい」

近江の岡田英大【写真:安藤隆人】
近江の岡田英大【写真:安藤隆人】

近江2年MF岡田英大「やると決めたらやり切りたい」

 その一瞬の予測と判断に、近江の2年生MF岡田英大の持つ魅力が凝縮されていた。第105回全国高校サッカー選手権滋賀県予選準決勝。草津東との一戦で、近江は2-1の勝利を収め、決勝進出を決めた。

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 この試合で先制点の起点となったのが、ボランチとして出場した岡田だった。0-0で迎えた後半15分、右サイドでロングキックに対してFW松元翔真が競ったボールに素早く反応すると、巧みなファーストタッチで前を向き、一気に加速。相手の守備陣の間を縫うように、右サイドのポケットへと侵入した。

 そこから送り込んだクロスは相手DFの足に当たったが、こぼれたボールをニアに飛び込んだ松元が拾ってターン。折り返しをファーサイドで待ち構えたFW山岡凌陽が頭で押し込み、貴重な先制点が生まれた。

「松元さんが競ってくれたことで、得意のセカンドボールへの反応ができました。ポケットにスペースが見えたので、迷わず『もう1つ運ぼう』と思いました」

 ボールの落下地点をいち早く察知する予測力、相手の動きを見ながらスペースを見つける判断力、そして前へと運ぶ技術。岡田の武器が詰まったプレーだった。

「昔から予測は得意な方でした」と語る彼は、トップ下とボランチが主戦場。トップ下ではスペースやFWのポストプレーなどに反応してどんどん前に出て行き、ボランチになるとセカンドボールの回収やプレスバックで予測が働く。ドリブルで仕掛けるのも得意で、ボールを持つと加速しながらどんどん剥がしていく。この試合でもセカンドボールの回収や前への仕掛けはチームを何度も活性化させた。

 唯一の2年生レギュラーである岡田にとって、今、袖を通しているスカイブルーのユニフォームがずっと憧れていたものだった。京都サンガF.C.U-15 SETA 滋賀でプレーしていた中学1年生の時の第101回全国高校サッカー選手権大会。2回戦で近江はGK上林真斗(専修大、ロアッソ熊本内定)、DF津久井佳祐(鹿島アントラーズ)、MF荒井悠汰(レノファ山口)、FW篠田翼(筑波大、藤枝MYFC内定)らタレント揃いの昌平高と対戦した。岡田はこの試合をテレビで観ていた。

「結果は1-3で負けてしまったのですが、昌平を相手にどんどん前に出ていくサッカーに衝撃を受けました。中盤以降の選手がどんどん前に飛び出して攻撃に厚みを加えるし、粘り強く戦うところも一気に好きになりました」

 さらに中学2年の冬に、近江が全国選手権で準優勝を果たしたことで、その思いは決定的になった。

「あの代は全体の運動量もすさまじかった。僕も運動量が武器で攻撃が好きなので、絶対に合うと思いましたし、近江でレギュラーを取るなら、もっと中学でやらないといけないと思うようになりました」

 明確な目標が、向上心に火をつけた。高校進学時には県外の複数の高校から誘いを受けたが、気持ちは揺らがなかった。中学3年生の夏に自ら近江の練習参加に応募したものの、最初の一般セレクションでは不合格。続いて自チームと近江の練習試合でも、コーチを通じてアピールの機会を求めたが、声はかからなかった。

 それでも、岡田は諦めなかった。3度目のチャンスが訪れたのは、FC湖東との練習試合の後だった。そこでようやく近江のスタッフから声がかかった。

「『来ないか』と言われた時はめちゃくちゃ嬉しかったです。ずっと諦めきれなかったし、ずっとチャンスはあると思っていました。自分が決めたことに対してめげたくないし、1つやると決めたらやり切りたい性格なんです」

 粘りに粘って勝ち取ったオファー。そして入学してからも磨き続けた予測力と技術、運動量を武器に、ボールを奪えば迷わず前へ。近江の攻撃的なサッカーに魅了された少年は今、スタメン唯一の2年生として憧れたサッカーを体現する存在へと成長している。

「3年生にとって最後の大会なので、チームに貢献したい一心です」

 決勝の相手は昨年度の代表校である水口高。準優勝以来となる3年ぶりの選手権出場に向けて、岡田は先輩たちの想いも背負って、中盤から攻守においてギアを上げる存在として躍動する。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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