Bチーム→全日本大学選抜10番 サッカー人生激変…磨き上げた“武器”「絶対に活躍できる」

国士舘大の小西脩斗【写真:安藤隆人】
国士舘大の小西脩斗【写真:安藤隆人】

国士舘大FW小西脩斗「負けた借りがあるので、必ず返す」

 9月2日から12日にかけて東北の地で行われている、大学サッカー日本一を決める第50回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント。ここではこの大会で躍動する選手に迫っていく。

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 準決勝で東海学園大を3-2で振り切り、4大会ぶりの決勝進出を決めた国士舘大。背番号10を託されたFW小西脩斗は、高い位置でボールを引き出し、受けると前を向いてボールを運んでラストパスを出したり、キープしてテンポ良くパスをさばいたりと、攻撃のリズムメーカーとして君臨している。エースストライカー・本間凜の大爆発は、その下にいる彼の存在があるからこそと言っても過言ではない――。

 まさに一瞬で前を向く。

 小西のプレーを見ていると、鮮やかで鋭いターンに目を奪われる。相手を背負いながら縦パスを引き出す際、ボールが足もとに入った次の瞬間には身体の向きが変わり、一瞬で相手と入れ替わって前への加速が始まっている。

「ターンはずっと自分の武器です。軸足でそのままファーストタッチをするというか、右足が軸だったら右足のアウトサイドでそのまま持っていく。そこで相手を置いていけるように意識しています」

 こう言葉にしたように、彼のターンには特徴がある。ボールを止めて、身体を反転させて、そこからドリブルに移るのではない。ファーストタッチとターン、そして加速が一連の動作としてつながっているからこそ、相手は分かっていても捕まえられない。

 つまり、ボールを受けてから次のプレーを考えるのではなく、受ける前に周囲を把握し、相手の位置を感じながら、最初のタッチで進むべき方向へボールと身体を運ぶ。だから彼は速い。

 そして、この武器を磨き続けたことが、彼の大学サッカー人生を大きく動かした。流通経済大柏高から国士舘大へ進学した小西は、2年間Bチームでプレーする時間が続いたが、それでも腐ることはなかった。

「試合に出ていない奴がパフォーマンスを落としていたら本末転倒だと思っていました。だからこそ、自分の武器を磨き続けて、試合に出られなくても『これをやっていたら絶対に活躍できる』というマインドはずっと持っていました」

 ターンや、その後のプレーの質に磨きをかけ続けた彼に転機が訪れたのは3年の時だった。トップチームに怪我人が出たことで声が掛かり、関東大学リーグの舞台に立つチャンスが巡ってきた。昨年の関東1部・第4節の東洋大戦で、エースストライカーの本間凜と2トップを組む形でトップチームデビューを飾った。

 そこで切れ味鋭いターンと俊敏な動きで攻撃の起点を作り出し、本間と息の合ったコンビプレーを見せて4-1の勝利に貢献。この試合、小西のサポートを受けた本間はハットトリックの大活躍だった。この一戦を境にレギュラーに定着すると、続く東京国際大戦で初ゴールをマーク。チームも東洋大戦から破竹の8連勝を飾り、その間に初ゴールを含む3ゴールをマークするなど、一気に好調なチームの主軸となった。

 この勢いのままリーグ2位の原動力となると、準優勝したインカレでは2回戦で退場した影響でスーパーサブに回るが、今年2月のデンソーカップチャレンジサッカー刈谷大会では関東選抜Aとして、決勝で本間と2トップを組んだ。さらに3月のデンソーカップサッカー日韓定期戦に全日本大学選抜の一員として出場すると、先月には全日本大学選抜のイタリア遠征も経験。チームでは背番号10を託され、大学サッカーの主役の1人にまで成長を遂げた。

 この躍進に彼は「本当に運が良かった」と振り返る。確かに、トップチームへ引き上げられたきっかけは偶然だったのかもしれない。だが、その場所に立っただけで試合に出続けられるほど大学サッカーは甘くない。この偶然をモノにしたのは、彼の努力の賜物にほかならなかった。

 コツコツと磨き上げたターンが、自身の見える景色を変えた。試合に出られない時間にも自分の武器を疑わず、その質を磨き、チャンスが来た瞬間にそれを表現した。その積み重ねがあったからこそ、一度掴んだ場所を誰にも譲らなかった。

 そして今、小西は大学日本一を懸けた舞台までたどり着いた。総理大臣杯決勝、相手は流通経済大だ。

 流経大柏高出身の小西にとって、流経大は多くの仲間が進んだ身近な存在でもある。その相手とタイトルを懸けて戦うことになったことを伝えると、「アミノバイタルカップ(総理大臣杯関東予選、3位決定戦で戦い、その時は3-3からのPK戦敗退)でも戦ったし、またかと(笑)。本当に縁があるんだなと思っています」と笑った。

「負けた借りがあるので、必ず返す」

 そう付け加え、鋭い目つきを見せた。心の中はただ1つ、目の前の相手に勝つのみ。決勝でも未来を切り開いてきたターンで、彼はどんな景色を見るのか。その先にあるのが大学日本一ならば、これほど彼らしい物語はない。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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