低迷する古豪で「本領発揮は難しい」 19歳日本人に試練…現地記者が指摘「問題は山積み」

バレンシアの佐藤龍之介【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
バレンシアの佐藤龍之介【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

バルセロナ戦に途中出場も守備に追われた佐藤龍之介

 今季4試合目にして初のベンチスタートとなった佐藤龍之介に、ラ・リーガ王者は高い壁となって立ち塞がった。

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 バルセロナは今季、カンプ・ノウの一部再開による収益アップなどが功を奏し、財政面の安定を取り戻した。今夏の移籍市場でも、レアル・マドリードに次ぐ1億8400万ユーロ(約340億4000万円)を投資し、イングランド代表FWアンソニー・ゴードンやスペイン代表MFロドリなど7人を獲得。これにより選手層に厚みを持たせ、ラ・リーガ3連覇に向けて盤石な布陣を形成した。

 毎年頭を抱えていたサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)の問題を解決し、選手登録がスムーズにいったことで、長年にわたる深刻な財政難は乗り越えたと言えるだろう。

 一方、バレンシアはピーター・リム氏がオーナー就任した2014年以降の杜撰な経営および投資制限による弊害が成績に顕著に表れている。現在の負債は7億ユーロ(約1260億円)とも言われ、ここ近年の大きな目標が“1部残留”と、かつての名門も今やその面影を失っている。この長年続く状況に憤りを感じ、サポーターは以前よりリム氏一族の退任を求め、抗議のブーイングも飛ばしていたが、最近はこれに今季4戦未勝利という成績不振に対するカルロス・コルベラン監督の辞任を求める声が加わっている。

 この状況下で今夏7人を補強したが、その金額はラ・リーガ13番目、バルセロナの20分の1にあたる900万ユーロ(約16億6500万円)。移籍金を支払ったのは、400万ユーロ(約7億4000万円)の佐藤、500万ユーロ(約9億2500万円)のスペイン人DFアルナウ・マルティネスだけで、そのほかは全てフリーと期限付き移籍での獲得となった。

 かねてより現地メディアに戦力不足を指摘されていたが、実際にここまでは、予想通りの展開を辿っている。ホームにバルセロナを迎えた9月6日のラ・リーガ第4節は、すべての面で両クラブのレベルの違いを感じさせる戦いとなった。バレンシアは8人負傷欠場でチーム状態が厳しかったとはいえ、開幕からここまでバレンシアは3戦未勝利、バルセロナは3連勝で首位と、その差は補強面だけではなく、成績面や実力面でも大きな開きがあった。

 これまで先発し続けていた佐藤は、開幕4試合目にして初のベンチスタート。キックオフからバルセロナに圧倒的な力の差を見せつけられ、佐藤が投入された後半18分にはすでに0-3と大差がつき、試合は終わりに近い状態だった。

 佐藤はほとんどの時間を守備に追われ、味方がボールを持った際にスペースを探し、前を向いて前線や逆サイドまで走り込むもパスがほぼ出てこない。時折ボールを受けても寄せが速い相手に1人では打開できず、味方との連係もスムーズにいかず、30分余りほぼ何もできないままラ・リーガ王者との初対戦を終えた。チームはさらに2点を奪われ0-5の惨敗を喫し、最下位に転落している。

地元メディア「ノストレスポルト」のディエゴ・エステバン・ベレンゲル記者【写真:高橋智行】
地元メディア「ノストレスポルト」のディエゴ・エステバン・ベレンゲル記者【写真:高橋智行】

地元記者が語ったベンチスタートの見解

 この試合を訪れていたバレンシアの地元メディア「ノストレスポルト」でクラブの番記者を務めるディエゴ・エステバン・ベレンゲル記者に、なぜ佐藤はベンチスタートとなったのかを分析してもらった。

「コルベラン監督は(右サイドに関して)少し前方にパブロ・マフェオを配置し、クラブのカンテラーノである若手のダビド・オトルビにチャンスを与えることで、バルサに対して多少の防御策を講じようとしたと思う。今日バルサに最も大きなダメージを与えられたのはオトルビだったので、采配に関してはそれだけが唯一評価できる点だ。彼も佐藤と同じく才能あふれる選手なので、今日は彼がチームにもたらすエネルギーが必要だと監督は考えたのだと思う」

「今日の佐藤は短い出番ながら、その時にできる限りのプレーをしたと思うが、投入のタイミングが、圧倒的に格上のバルサ相手に点差を追いかけている時で、さらに観客全員がチームに対しブーイングを飛ばしている非常に厳しい状況だったため、彼に求められた役割が過酷なものだったことは間違いない。いくつかコンビネーションを見せる機会はあったものの、今日の結果は佐藤に限らず、全員にとって非常に厳しいものとなった」

 佐藤とポジションが被る可能性のある、リバプールからの期限付き移籍で加入したイングランド人MFエリオットについては、両者の共存は可能だと考えている。

「佐藤と似たタイプの選手だと思うが、コルベラン監督はセンターフォワードの後ろに2~3人の攻撃的MFを配置することを考えていると思うから、実際にはエリオットと佐藤は一緒にプレーすることになると読んでいる。彼らは似たようなタイプの選手だからうまく連係できるはずだ。だからポジション争いのライバルにはならないと思うし、仮になったとしても悪い方には働かず、その競争は両者にとって良い刺激になると思う」

 最後に、バレンシアが勝ててない理由については攻守の両面で大きな問題を抱えていることを指摘した。

「問題は山積みだが、今日のように守備を固めてカウンターを狙うようなゲームプランを立てるのなら、相手ゴール前での高い決定力が必要になるが、バレンシアはそれが欠けている。何よりも守備で激しいプレスをかけることが不可欠だが、バレンシアはそれさえもできていない」

 バレンシアはラ・リーガ開幕から4試合で1分3敗、得点はわずか1、勝ち点1の最下位と厳しい状況に陥っている。この困難な局面で佐藤が本領発揮するのはかなり難しいことだが、チームとともにどうにかしてこの状況を好転させてくれることを期待したい。

 佐藤はこのあと、セビージャ、アラベスとの戦いを経て、9月20日にホームで行われるラ・リーガ第7節で、久保建英との初の日本人対決を控えている。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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