歓喜の瞬間から8か月 17年ぶりのJ1で求められる「重要命題」…千葉が目論む「タイトル獲得」

千葉の大久保裕樹TDが語るJ1での戦い方
2025年12月13日の明治安田J1昇格プレーオフ2025年で徳島ヴォルティスを破り、悲願の最高峰リーグ復帰を果たしたジェフユナイテッド市原・千葉。2009年当時の生き証人は米倉恒貴だけだったが、ジェフに関わる全ての人々が”オリジナル10の名門のJ1復帰”に歓喜した。
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それから8か月。目下、ジェフは2026-27シーズンJ1に挑んでいる。2026年前半に行われたJ1百年構想リーグで最下位に沈んだことを踏まえると、「J1残留・定着」が現実的テーマと言えそうだ。しかしながら、クラブ側は「小林慶行監督の下でタイトル獲得を目指す」と強気の目標を設定。泥臭く粘り強い戦いを見せ、上位進出を目論んでいる。
野心溢れるチームの強化部門のトップに立っているのが、42歳の大久保裕樹・テクニカルダイレクター(TD)だ。千葉県市原市出身で、学生時代は市立船橋高校(市船)で活躍。現役最後だった2016~17年をジェフで過ごし、そのままクラブスタッフとなった地元愛の強い彼に今季の戦いや自身のキャリアについて聞いた。
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「僕は市船を卒業した後、サンフレッチェ広島、京都パープルサンガ(現京都サンガFC)、栃木SC、徳島ヴォルティス、松本山雅FCの5チームでプレーし、ジェフで最後に2年プレーして引退しました。
その後、スカウトを8年間やらせてもらって、アマチュアを中心に高校生や大学生を主に見ることになった。高校生だったら3年間、大学生なら4年間あるわけですけど、それを継続的に見ていたら7年はかかる。そのサイクルを1回やって、スカウトとしてようやく見極める目が養われたかなと思っていました。
自分としてはそのままスカウトを極めていく気持ちもあったんですけど、スカウトになった時点で『いつかは強化トップの仕事をやってみたい』とも考えていた。そのチャンスが昨年末に巡ってきた。ジェフを昇格へ導いてくれた鈴木健仁さん(現横浜F・マリノス・スポーティングダイレクター=SD)が離れることになり、『小林監督の3年間を一番よく知っている人がそのまま継続してやった方がいいんじゃないか』という話をいただいた。有難くやらせてもらうことになりました」
名門・ジェフの強化トップという重責に就いた経緯をこう語る大久保TD。それは2026年1月頭のことだった。他のJ1クラブを見渡すと、彼の松本山雅時代の恩師である清水エスパルス・反町康治・ゼネラルマネージャー(GM)、FC町田ゼルビアで手腕を振るっている原靖・フットボールダイレクター(FD)など60歳前後のベテランがリードしている。近年は鹿島アントラーズの中田浩二FD、浦和レッズの堀之内聖SDのような40代後半の人材も活躍するようになったが、40歳そこそこの若手は少ない。
加えて言うと、彼はスカウトとしては経験を積み上げてきたが、強化トップの仕事はまた別物だ。大久保TDよりも若い30代後半でSDに就任した湘南ベルマーレの坂本紘司取締役がかつて「経験ゼロの自分は選手の代理人や他クラブの強化担当に名刺を配るところからスタートしました。SDといっても毎日契約交渉をするわけではなく、監督や選手と意思疎通、現場へのフィードバックなど、細々した仕事をこなす日々が大半。それを少しずつ覚え、慣れていきました」といったエピソードを明かしていたが、大久保TDの場合はすでに業界内ネットワークを持っていた。そこは大きなアドバンテージだったに違いない。
「スカウトだった8年の間に、高橋悠太さんと鈴木健仁さんという2人のGMを見てきて、何をするべきかという部分は見えていたので、自分の色をどう出すかということだけ考えればよかった。そこは僕にとって追い風でした。
でも、自分の色といっても、すぐには全てをガラリと変えるわけにはいかない。徐々に自分の思っているチーム強化をしていきたいと考えて、1つずつ取り組んでいこうと考えました」と大久保TDは静かに言う。
実際、百年構想リーグの間は津久井匠海、安井拓也、石尾陸登、天笠泰輝を補強し、高卒と大卒を獲得しただけ。「現状維持」の印象が強かった。昇降格がなく、久しぶりのJ1に慣れるという意味ではそれでもよかったのかもしれない。
しかしながら、降格のある26-27シーズンは事情が違ってくる。J1で戦える戦力を整えなければ、1年で2部に落ちることもないとは言い切れない。そこは現役時代、京都でエレベーター状態を経験し、松本山雅で昇格しながら1年で落ちる経験をしている大久保TDも痛感していた点に違いない。
「今のジェフはJ1経験者が少ないので、百年構想リーグはJ1の選手・チームと対戦する中で球際やデュエルの激しさ、プレッシャーの厳しさなどに気づいてもらい、スタジアムの雰囲気を味わってもらうことで、ベースアップを求めたんです。だからこそ、そこまで積極な補強はしませんでした。
結果的にはEAST・18試合を3勝・3PK負け・12敗という形で終わった。最初は雰囲気に飲まれて持っている力を出し切れない選手もいましたけど、試合を追うごとにパススピードや判断スピード、フィジカル的な強さに慣れていっていると感じました。小林監督を先頭に毎試合毎試合、次の試合に向けて練習から100%で取り組んでくれている姿勢もありましたし、ベースアップは確実に見て取れた。
そこに必要な戦力を加えたいということで、川崎フロンターレからエリソンを獲得。ダニエル・ホール、ホシャ、マテウス・インディオという外国人選手を獲得。さらに岡村享也をレンタルバックさせ、市船の後輩にあたる矢村健、水戸ホーリーホックでJ1昇格の原動力となった飯田貴敬も加えました。
彼らを含めて、ジェフの『泥臭く粘り強く戦う』というマインドは絶対に外しちゃいけない部分。これまで積み上げてきたものを180度変えるということではない。土台を生かしながら勝てるチームを作っていこうと思います」と大久保TDは目を輝かせた。
同じオリジナル10のサンフレッチェ広島に挑んだ8月8日の今季開幕戦は0-3、第2節のFC町田ゼルビア戦では0-4で完敗。悔しい結果に終わったが、17年間J2で悔しい思いをしてきたクラブがこれでひるむはずがない。ここから徐々に強いチームになっていくことが、今季の彼らに求められる重要命題と言っていい。(第2回に続く)
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。






















